学会が独自に重症例・死亡例を調査
救急救命センターで亡くなる妊婦さんも含めなければ正確な妊産婦死亡統計が出ないことがわかった日本産婦人科学会は、2004年の妊産婦死亡・重症例について、学会の研修指定施設(高度な産科医療施設)834施設及び救急救命センター164施設のデータを調べました。
これらの施設では救命を必要とした重症の人2325人を扱っていて、うち32人が亡くなっていました。これは、2004年の人口動態による妊産婦死亡の65.4%に当たります。
脳出血の発生は妊婦さん4万人に1人と稀
しかし、死亡率は4割に近い
このうち脳出血を起こした人は18名で、うち7名が亡くなっていました。この統計によると、脳出血を起こした妊婦さんの母体死亡率は7/18、つまり38.6%ということになります。
「脳出血を起こす人はとても少なくて、妊婦さん全体の率に換算すれば実に4万人に1人です。さらに亡くなるのは10万人に1人です。でも、ひとたび起こしてしまうと、妊婦さんの疾患としてこれほど死亡率が高いものはありません」と中井医師は言います。「妊産婦死亡を減らすには、まず死因報告の規定を見直し改善しなければ」
昔からの産科疾患による死亡は1%以下
この調査で上がってきた疾患の大部分は、恐ろしい産科疾患として有名な胎盤の早期剥離や大量出血が占めました。大変な数の母親の命を奪ってきたこれらの疾患は、今でもたくさん起きていました。
しかし産科学の進歩や、おそらく総合周産期母子医療センターの整備も功を奏して、ずいぶん母親の命が救えるようになっていました。母体死亡率は胎盤の早期剥離が0.5%(601人中3人)、大量出血が0.4%(934人中4人)という低さでした。