若い女性も妊娠中に脳出血を起こすことがあります。 イラスト・平井さくら |
実は、脳出血は妊婦死亡原因のトップ。20代・30代の妊婦さんにも起きます
救急搬送のニュースで広く知られたように、脳出血は出産年齢の人に無縁の病気ではありません。ごくまれにしか起きませんが、ひとたび起きれば致死率が高いとても怖い病気です。多摩脳神経外科院長・諌山和男先生に、脳出血の基礎知識をお聞きしてきました。本人は何もわからなくなる可能性がある病気なので、ご夫婦で読んでいただければと思います。
河合 脳出血というのは脳でどんなことが起きる病気ですか?
諌山先生 「脳血管障害」にはクモ膜下腔という場所のクモ膜下出血もありますが、脳の中で起きる病気としては、血管が詰まる「脳梗塞」と血管が破れる「脳出血」があります。梗塞のあとにその血管が破れることもあります。出血すると、脳は頭蓋骨という閉鎖空間ですから血液の逃げ場がありません。ですから脳は圧迫され、むくんできます。つまり、傷と圧迫というふたつの問題で脳に危機が迫っているのが脳出血という状態です。
河合 これまではお年寄りの病気だと思われてきましたが。
諌山先生 高齢者が圧倒的に多いのですが、20代・30代の人にもあります。私も救急救命センターに勤務していたときは数例妊婦さんの脳出血を経験しました。後遺症などなく元気になられた方もいましたし、残念ながら亡くなった方もありました。
経験したこともない激しい頭痛には注意!意識の変化や片側の麻痺が出てくれば脳出血の疑いは濃厚
河合 脳出血やくも膜下出血を疑うべき症状を教えてください。
諌山先生 今まで経験したことがないような激しい頭痛が起きます。嘔吐のあるような頭痛は尋常ではありません。偏頭痛も吐き気がすることがありますが妊娠中はあまり出ませんし、ご本人が「以前も経験した感覚だ」とわかるでしょう。さらに特徴的なのは、手に力が入らない、あるいは他の部分がうまく動かせないという感覚が起きることです。右か左かどちらか片側に起きます。さらに重症化してくると意識障害が起きます。いつものように話せなくて内容が明らかにおかしかったり、すぐ寝込んでしまったりするなら中程度の症状です。さらに進むと、刺激を与えても目が覚めない昏睡状態になります。意識障害が起きたら、一刻を争う事態だと思ってください。