高用量葉酸の摂取という考え方

これまでは、サプリメントでの葉酸摂取量は、厚生労働省からの推奨もあり400マイクログラム(0.4mg)とされることから、日本のほとんどのサプリメントは葉酸含有量が横並びで400マイクログラムとなっています。

高用量の摂取で不妊治療での着床率、生産率改善の報告も

最近になって、妊娠前から高用量葉酸をサプリメントで摂取することにより、不妊治療(特に体外受精などの高度生殖医療では、受精率、着床率、生産率の改善)での効果があると報告がされました。高用量葉酸摂取により、卵子をつつむ卵胞液の葉酸濃度が高まることで、卵子の質がよくなる可能性があるという考察からです。そうであれば、それを示す調査報告はまだありませんが、自然妊娠もしやすくなるということになります。

神経管閉鎖障害も、0.4mgでは先に予防効果は3~4割でしかないと説明しましたが、Waldらは、2001年にLancetという医学雑誌で、サプリメントによる葉酸摂取が0.4、1、3、5mgと増えるにしたがい、血中の葉酸濃度が高まり、神経管閉鎖障害のリスクも36、57、78、85%と減り、妊娠を計画している女性は葉酸5mgの服用がよいと推奨しました。その他、葉酸摂取では、そのメカニズムまでは解明されていませんが、神経管閉鎖障害だけでなく、口唇・口蓋裂、そして先天性心疾患のリスクも低減するようです。そして、高用量であれば効果もそれだけ高まる可能性があることが示唆されています。なお、高用量の定義はありませんが、400マイクログラムの倍にあたる800マイクログラム以上がひとつの基準になってくるようです。

欧米の知見では、葉酸は1日5mgまでは摂取量が増えるだけ、予防効果が高まると考えられています。ただし、葉酸はDNAを調整する栄養素でもあるため、念のために効果のある最低量をというのが日本のスタンスです。

葉酸摂取による副作用は?

それでは、高用量葉酸も含めた、サプリメントによる葉酸摂取の副作用はどうなのでしょう。日本でも、前回の妊娠で子ども神経管閉鎖障害だった女性と、てんかんの薬を飲んでいる女性には妊娠前から葉酸が5mg含まれているフォリアミン錠という薬の処方が処方されます。5mgとは推奨されている0.4mgの12.5倍量で、「日本人の食事摂取基準2015」での、葉酸サプリメントの耐用上限量の1000マイクログラム(1mg)の5倍量です。

主要国の妊娠希望の女性への葉酸摂取勧告は0.4~5mgも幅がありますが、日本では副作用を懸念して最小の0.4mgを推奨しています。葉酸はビタミンAやDのように脂溶性でなく、体内への蓄積性は少ないので毎日摂取することが望ましい水溶性ビタミンです。欧米では1日5mg摂取の調査で健康被害の報告がなかったことを基準に、厚生労働省はより安全にと、その5分の1にあたる1mgまでを安全とし、それを越える摂取ではビタミンB12欠乏の診断を困難にする可能性があるとしています。

できればサプリメントでなく食事で摂取したいのですが?
それも正しい考え方です。妊娠で必要な栄養素は葉酸だけではありません。バランスのとれた食事で、しっかりと栄養を摂ることが大切であることにかわりありません。平成25年国民健康・栄養調査によれば、20-29歳、30-39歳、40-49歳の1日の食事による葉酸摂取量は217、233、234マイクログラムでした。「日本人の食事摂取基準2015」での成人女性の葉酸推奨量は240マイクログラムで、妊婦、褥婦ではそれぞれ240、100マイクログラムの付加量が算定されています。きちんとした食事を摂れていれば、妊娠中の付加量まではいかないにせよ、ほとんどの場合、まず問題はないのでしょう。

摂取基準では、妊娠を計画している女性は、サプリメントなどで400マイクログラムの付加的摂取が推奨されていますが、これも摂取しなければ胎児に影響がでるわけではありません。

ただし、全体で見ると、頻度は少ないものの、食事だけで葉酸が不足することにより、神経管閉鎖障害などのリスクが少しだけ高まるので、そこをどう捉えるかということになります。 

なぜ葉酸はサプリメントなのか?

それでは、なぜ葉酸ではサプリメントが推奨されるのでしょう?

天然型葉酸と合成型葉酸の違いとは?
通常の食材中に含まれている葉酸はポリグルタミン酸型の食事性葉酸(food folate)、あるいは天然型葉酸(natural folate)です。これは、サプリメントや強化食品に添加されている合成型葉酸(モノグルタミン酸型、folic acid)と区別されます。医薬品のフォリアミン錠も合成型のfolic acidです。合成型は消化吸収がよく、化学的にも安定しているのが特徴で、食事性や天然型と比べて効率よく葉酸を摂取できるのがメリットで、それが葉酸はサプリメントでという理由になります。

実際、空腹時に摂取された合成型の生体での利用率を100%とすると、食事と一緒に摂取した利用率は、合成型では約85%ですが、天然型のポリグルタミン酸型では約50%になると推定されます。サプリメントの中には天然由来をアピールしているものがありますが、然型はサプリメントとして生体利用性が低いと言っていることになります。食事基準での推奨もモノグルタミン酸型(合成型)です。葉酸に関してはサプリメントでも薬というイメージを払拭しておいた方がいいでしょう。

サプリメントは有用だが慎重に選択を

最近の晩婚、晩産化もあり、不妊治療でも体外受精など高度生殖医療で妊娠する女性が年々増えています。さらには、「卵子老化」が知られ、出生前診断もこれだけ普及し、仕事などの多忙などから、きちんとした食事をとれていない現状なども考えあわせると、今後、葉酸サプリメントはさらに普及してくるのでしょう。ただし、それでも基本は食事であることにかわりありません。葉酸サプリメントは有用とは思いますが、必須ではありません。副作用もまず心配はないのでしょうが、リスクがないとはいえません。ただし、摂取しないリスクも考える必要があります。こうした、きちんとした情報のもと、摂取するかどうかを自分で決めることが大切でしょう。もし、摂取するのであれば、妊娠前からをお勧めしますが、妊娠中からでも遅くはありません。いずれにしても、その時にしかできない、未来への投資というコンセプとでの摂取となるでしょう。

ただし、サプリメント製品の中には、安全性が未検証の原材料を含む製品もあります。また葉酸サプリメントは、葉酸単独のものは少なく、他のビタミンやミネラルも含まれたものがほとんどです。この記事から、高用量を試行しようと、通常の葉酸(0.4mg)サプリメントの服用錠数を増やすことは、他の栄養素が過剰となる可能性があるので控えてください。サプリメントを使用するのであれば、多種多様の製品がある中で、慎重に選択することも大切になってきます。

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