室生犀星記念館
三文豪の中で一番最後に生まれたのが室生犀星(1889~1962)です。犀星は詩、俳句、小説、随筆、童話など幅広いジャンルを手掛け、数多くの作品を残しています。室生犀星記念館は犀星の生家があった場所に建てられ2002年8月1日(誕生日)にオープンしました。場所は市内中心部の静かな住宅地の中にあり落ち着いた所です。
吹き抜けの壁には、グラフィックで作られた初版本の表紙が、下から上に向かって年代別に展示されています。1918年(大正7年)の「愛の詩集」から亡くなった1962年(昭和37年)の「好色」まで、その数は160冊余りにのぼります。
「心の風景」と題されたこのコーナーには、犀星が好きだった庭づくりをイメージした中庭や娘で随筆家の故室生朝子氏らのインタビュービデオを見ることができます。ここで犀星の人柄や業績を知ることができます。
執筆していた机や火鉢など愛用品が展示されています。骨董品が好きだった犀星だけあって、その机も側面に彫刻の飾りがある凝った感じのものです。
犀星はお茶の間で執筆していたそうです。その間、家族は出入り禁止でした。ただし、執筆するのは午前中だけ。その後は家族とのだんらんを楽しみます。おやつの時間などもありました。
生まれてからすぐにもらわれていったという寂しい生い立ちを持つ犀星にとって、家族と過ごす時間はとても大切なものでした。
犀星は面倒見もよく多くの人に慕われており、たとえば、萩原朔太郎や芥川龍之介など名だたる詩人・作家とも交流がありました。軽井沢に行った芥川から、「室生さんも早く来てください」という催促があったほどです。
ところで犀星は締め切りをやぶったことがないと言われています。多くの作品を残していますが、題材に苦労することもなかったと言います。
その秘訣は幼いころから培われた自然を見る目・観察力、俳句から童話まで幅広いジャンルが書けるマルチな才能、さらに「毎日同じ時間に机に向かった」という習慣にもあったのではないでしょうか。うまく頭を切り替え集中する能力が、余裕のある作家活動につながっていったのかもしれません。
2階では企画展の展示コーナーや音声で作品を紹介するコーナーがあり本人の朗読も聴くことができます。その中には校歌もあります。犀星が作詞したのは26校。金沢だけではなく東京の小学校の校歌も作っています。
記念館を見学した後は、犀星が育てられたお寺「雨宝院(うほういん)」や犀星の名前にも付けられている「犀川(さいがわ)」を訪れてみてはいかがでしょうか。犀川に沿ってある「犀星のみち」には文学碑もあり、散策にもおすすめです。
■ 室生犀星記念館
住所:金沢市千日町3-22
TEL:076-245-1108
観覧料:300円
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:年末年始(12月29日~1月3日)、展示替期間
アクセス:金沢駅からバスで約15分「片町」下車徒歩約6分
☆市内の15の文化施設で利用できる共通観覧券もあり(有効期間が1日500円、3日間800円、1年間2000円)
利用できる施設の窓口で購入できます
三文豪はそれぞれ多くの作品を生み出しています。記念館めぐりをきっかけに、作品を手にとってみてはいかがでしょうか。新たな発見があるかもしれません。