「お手紙」「手紙」敬語としてどちらが正解? 意味と使い方
「お手紙を差し上げました」「お手紙いたしました」といったように、「手紙」に「お」を付けるのは、敬語として正しい?
手紙を書くうえで、よく使う言葉の中には、間違えやすいものや正しいかどうか迷うといったものもあります。たとえば、以下のような文章の「お手紙」の「お」についても、どちらか迷うことが多いと聞きます。では、その意味と使い方について見直してみましょう。
■文例
A:「お手紙ありがとうございました」
B:「突然お手紙を差し上げます失礼をお許しくださいませ」
C:「先日お手紙いたしました井上でございます」
この表現は正しいのでしょうか?
■正解と解説
これらはいずれも正しいとされています。まず、Aの「お手紙」は、相手からの手紙=相手の行為を高めている尊敬語としての使い方で、これは迷うことは少ないでしょう。
それに対して迷いやすいのはBやCです。自分の書いた手紙に「お」を付けるのはおかしいのではないかという点で迷うようです。しかし、これらは自分が書いた手紙であっても、相手への手紙、相手に差し上げる手紙として考えると、「お」が付く意味が理解できます。この場合の「お手紙」とは、向かう先を高める意の謙譲語(謙譲語1)としての使い方です。
このように「お手紙」は、尊敬語、謙譲語(詳しくは「謙譲語1」)の使い方以外にも、ときに美化語の意味でも使われることがあります。
- 尊敬語としての用法
例「先生が先日お手紙をくださった」 - 謙譲語(謙譲語1)としての用法
例「先生に昨日お手紙を差し上げた」
「本屋さんでお手紙の書き方の本を見つけた」「お手紙用の便箋を買いました」などは、尊敬語や謙譲語1の類ではなく、美化語としての使い方に当てはまると見られます。
「お手紙」という言葉ひとつでも、それぞれ違った意味を持つ点は少々ややこしいものですが、「お手紙」に同じく、尊敬語とともに謙譲語1としても使っている言葉は案外多いものです。ほかにどのような例があるか探してみましょう。いずれも日常何気なく使っている言葉ばかりですね。
(例)
お電話、お知らせ、ご通知、ご連絡、ご報告、ご案内、お礼、おわび、お見舞い、ご挨拶……など。
敬語の種類とは?
使いすぎにも注意して、適切な言葉で表現しましょう。
「お手紙」の例に見られる尊敬語や謙譲語ですが、それでは敬語の種類としてはどのようなものがあるのか、こちらも再度見直してみましょう。
敬語はこれまで、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類に分類されていましたが、平成19年、文化審議会答申の『敬語の指針』では、敬語の働きをより的確に理解するためとして、従来の3種類に謙譲語2(丁重語)と美化語が加わり、尊敬語、謙譲語1、謙譲語2(丁重語)、丁寧語、美化語の5種類に分けて解説されています(参考:「敬語の種類と使い方」)。
敬語の5分類
- 尊敬語:「いらっしゃる・おっしゃる」型
- 謙譲語1:「伺う・申し上げる」型
- 謙譲語2(丁重語):「参る・申す」型
- 丁寧語:「です・ます」型
- 美化語:「お酒・お料理」型
「美化語」は、「お手紙用の便箋」などのように、ものごとを美化して述べるものです。しかし、「私のお電話番号は9999-9999です」「このところお休みがとれずお肌の調子が悪くて」など、自分だけに関する事柄に「お」や「ご」を付けすぎるのは不自然と感じる人も多いもの。
いくら美化語のつもりで使っている言葉でも、中には相手側の尊敬語としてしか使わない言葉もありますので、使いすぎにも注意して、適切な言葉で表現しましょう。
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