日本では、石仏の評価が比較的低い
近年の仏像ブームで、京都や奈良の有名な寺は、ますます拝観者が増えたようです。それらの寺では、世にも立派なお堂や堅牢な収蔵庫内に仏像が祀られています。しかし実は、建物の中にある仏像だけが優れているわけではありません。わたしは、戸外にある石仏も大好きで、どこの寺に行っても、境内の片隅をチェックします。すると、たいていは、ひっそりとお地蔵さんや如意輪観音像がいらっしゃいます。よく見ればとても美しかったりかわいかったり、はたまた面白かったりするのに、なぜ、日本では、木製の仏像ばかりがもてはやされるのか?大分県国東半島の熊野磨崖仏。7メートル近い巨大な仏様です
大分県は、石仏好きの天国
仏像マニアの中では少数派の石仏好きが泣いて喜ぶ聖地があります。それは、大分県です。大分には、まず、国東半島という石仏でいっぱいのエリアがあります。こちらは、あまりほかで見ることができない石の仁王様で有名で、空港にそのレプリカが飾られているほどです。磨崖仏も巨大なものがいくつもありますが、半島全体が山がちなので、車で行ったとしても、一部は歩く覚悟でお出かけください。両子寺山門。国東の寺の山門は、よく、石の仁王様に守られています
臼杵は風情のある小京都
駅から近いところに城跡や古い町並みがあるので、まずはひと歩き。石垣や石畳の道、三重塔などが残る、風情のある町です。古い町のため、寺や神社も数多いので、ゆっくり探索してみましょう。
謎に包まれた臼杵石仏
臼杵石仏は、JRの臼杵駅からバスかタクシーで10分程度の田園地帯にあります。なだらかな里山に60体以上の磨崖仏があり、そのうち59体が国宝に指定されています。ちなみに、こちらの石仏が国宝になったのは、1995年のこと。石仏の国宝指定は、これが全国初のことです。60余体の磨崖仏は、ホキ石仏第一群、ホキ石仏第二群、山王山石仏群、古園石仏群の4つのパートに分かれ、それぞれに、覆い屋で守られています。石仏は磨耗しやすいので、こうして屋根をつけて風雨から守るのです。それぞれにたくさんの石仏が並んでおり、見事のひとことです。
傑作ぞろいのホキ石仏第一群
4つのパートの中で一番有名なのは、最後にある古園石仏群です。中央の大日如来像のお顔が印象深く、臼杵のシンボルともなっています。実は、この仏様のお顔は、国宝指定に先駆けた大修復のときまでは、胴体から落ちて地上にありました。この様子を見慣れた地元の方々からは、「頭部が落ちた状態で長年親しまれたものを、いまさら元に戻すなんて」という異論もあったそうです。覆い屋内には、頭部が落ちた様子の写真もあるので、現在の様子と比較できます。皆さんは、どちらがお好き?
現在の大日如来
首が落ちた状態の大日如来(覆い屋内の写真を写しました)
周辺も歩いてみよう
下半身が土にめり込んだ仁王様
臼杵石仏を作ったとされる伝説の真名長者の発願により創建されたといいます。こちらには、腰から下が土に埋まったユニークな石の仁王像や、真名長者夫妻とされる石像があります。
どこまでも広がる見事なハス田
ハス田で発見した田の神さぁ
もうひとつ、必ず見てほしいのは、国道から臼杵石仏の入り口に向かう道すがらの田んぼの中にある「深田の鳥居」です。これも石でできていて、柱の4分の1ほどが田んぼに埋まっています。臼杵石仏と関係が深い日吉神社の鳥居と言われているようですが、これも、はっきりしたことは分からず、謎に包まれています。石仏とその周辺には、まだまだ多くの謎が残っており、それだけに、人の心を惹きつけるロマンに満ちているのです。
おおらかながら謎に包まれた鳥居
ハス料理をいただく
臼杵石仏の入場券売り場の近くにある「うさみ茶屋」という店で、 さらに、わたしの心を惹きつけるものを発見! それは、ハスの花が咲く時期限定の特別メニュー「蓮料理」です。ハスの葉や花をうまく使った盛り付けも美しい
ハスの葉に包まれたハスごはん。上に乗っているのはハスの実
■うさみ茶屋
住所:大分県臼杵市深田833-5
TEL:0972-65-3333
料金:蓮コース 3150円
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■臼杵石仏
住所:大分県臼杵市大字深田804-1
TEL:0972-65-3300(石仏事務所)
料金:大人530円
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