ロングセラー絵本を読んでみる
絵本の世界では、次のように言われています。
- 10年経過して絵本として一人前
- 20年経過して優秀作に昇格
- 30年経過して大御所の仲間入り
売れなければすぐに絶版となってしまう出版界では、ただ時流に乗っただけの絵本は、ベストセラーにはなりえてもロングセラーにはなりません。子どもたちに寄り添い、繰り返しの鑑賞に堪える力を持った絵本だけが、ロングセラーとなるのです。
『ねないこだれだ』(福音館書店)の奥付 初版年や増刷回数などがわかります
そこで、絵本を選ぶ際には、奥付とよばれる絵本の最後のページを見てみましょう。そこには、出版社名や本のサイズなどのほか、その本が初めて出版された年や、発行されてから何回刷られてきたかなど、その本の生い立ちが記されています。いわば、絵本にとっての母子手帳のようなものです。この貴重な情報を利用しない手はありません。
日本での初出は1965年というのロングセラー『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン作 石井桃子訳 岩波書店【画像提供Amazon】
もちろん近年出版された絵本のなかにも優れたものはたくさんありますが、発行から20年以上が経過した絵本には、ハズレが少ないと言えます。時には、発行から20年以上が経過して「成人式をむかえた(?)絵本」を選書の基準にしてみてはいかがでしょう。
読者レビュー、新刊情報、図書館を活用する
最近は読者レビューや絵本の評価を掲載したウェブサイトも増えてきました。選書の幅を広げるために、このような読者の声を参考にされる方も多いことでしょう。これらは有益な情報で、絵本選びに役立つことも多いものですが、こういった情報を利用する場合には、必ず読んであげるお子さんを意識して自分自身でも考え、情報を鵜呑みにしないようにしましょう。売り手にとって都合の良い情報が意図的に掲載されている可能性や、レビューアーの子が喜んだというだけの人気投票の側面もあることを忘れないようにしましょう。
また、新聞の新刊情報や書評も役に立ちます。新聞以外では、『この本読んで!』(JPIC発行/季刊/年額4200円)、『Bookbird日本版』(マイティブック発行/季刊/2310円)などの絵本情報誌も参考になります。読み物としても楽しいので、おすすめです。
図書館や書店には、テーマ別や年齢別のブックリストが用意されていますが、子どもの本を知り尽くした司書や書店員の方のブックリストには、良い作品がたくさんピックアップされています。これらもぜひ活用していきましょう。また、図書館ではリファレンス・サービスとして、お子さんやお母さんの好みを伝えて、絵本を推薦してもらうこともできます。数は少ないですが、同様の機能を持つ書店もありますので、最初はちょっとドキドキするかもしれませんが、遠慮なく相談をしてみてはいかがでしょうか。