長期優良住宅/長く暮らせる家

温熱環境から考えると快適な家になる?(2ページ目)

南に面した明るいリビングを住宅の理想形と考えている人は多いと思います。果たしてそれが正解なのでしょうか。長く暮らすには、快適な温度を保ち、家の中の温度差が小さいでなければなりません。そこで、今回は温熱環境という視点から快適な家になる間取りを考えてみたいと思います。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

長い時間を過ごす空間の温熱環境を第一に

一般的には、敷地形状や周囲の環境などを踏まえて間取りを決めていきますが、温熱環境の面から考えるなら、部屋の配置と、通風・採光は特に重視したい項目です。

一戸建てでも快適性を考えるなら長い時間を過ごす場所ほど温熱環境のよい場所に。そのほうが光熱費も安くなりそうです

一戸建てでも快適性を考えるなら長い時間を過ごす場所ほど温熱環境のよい場所に。そのほうが光熱費も安くなりそうです

前ページのマンションの例では外気温に接した面が少ないほど断熱・保温性能が高くなっていました。これを1軒の戸建て住宅にあてはめると、2階よりも1階のほうが断熱・保温性能が高くなるはずです。また、南に面した部分は、夏は暑くなるものの冬は暖かく、北に面した部分はその逆になります。また、西側は、西日によって建物自体が暖められるので、夏は暑く、冬は暖かさを享受できます。東側は、1年を通して主に午前中に日が当たり、明るさ、暖かさが得られます。

これらの要素を考慮して間取りを考えると、1日のうちで最も長く家族が過ごす空間(例えばリビング)は風通しや日当たりの条件がよい場所に配置するのがいいでしょう。このとき、地域にもよりますが、部屋の大部分が西側に接していたり、大きな開口部があると、冷暖房効率に大きな影響を与えそうです。また、子供室のように日中だれもいない部屋は日当たりのよい場所に設置する必要はなく、北側でもよいと考えられます。

さらに、浴室や納戸のように滞在時間の短い空間なら西側でもいいかもしれませんし、反対にトイレの位置は西側以外ならどの方角でもよさそうです。

窓は風通しのよい配置と断熱仕様がカギ

次に窓の配置について考えます。窓の配置は風が抜けることを考え、南と北というように二面に設けることが理想的です。また、どうしても同じ面にしか窓を設けられない場合は、高さを変え て。高い位置と低い位置でも風は通ります。

27度より30度ほうが快適?でも触れましたが、自然の風は冷暖房機器でコントロールされた環境よりも過ごしやすいと感じることが多いので、風通しを考えて窓の配置や形状を考えましょう。

そして、複合サッシに、Low-Eガラスにして熱損失率を抑えましょう。窓は寒いときでも暑いときでも外気温に影響を受けやすいなので、住宅全体の気密・断熱性能を高めるに重要な部分です。

気密・断熱性能に優れた現代の住宅でも

住宅メーカーがつくる最近の住宅は、とても気密・断熱性に優れています。標準仕様で次世代省エネルギー基準に適合している会社もあるので、特別に注意を払う必要はないと考える人もいるでしょう。

けれども、住宅が密集していたり、幹線道路が近くにあるなど過酷な条件下では、冷暖房設備に頼る割合は大きくなります。そして、同じ敷地でも温熱環境に配慮した家づくりをすれば、より快適に、より省エネルギーを実現した住宅になるはずです。

ですから、間取りを考えるときに温熱環境にも配慮することは、毎日の生活の質の向上につながることなのです。長く過ごす部屋の温熱環境はどうなっているか、冷暖房効率のよいプランになっているかという視点を持つと、また違ったプランの検討もできると思います。長く暮らすには、季節を問わず快適な生活ができる家でなければなりません。その点で言えば、現代の住宅なら当然のレベルの気密・断熱性を備えたうえで、さらに快適性や経済性に優れた家づくりをするためにも、温熱環境重視すべきことなのです。
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