産業遺産とは何か?

オランダの世界遺産「キンデルダイク・エルスハウトの風車群」

オランダの世界遺産「キンデルダイク・エルスハウトの風車群」。国土の四分の一が海面下にあるオランダでは、風車によって排水を行っていた

産業遺産とは、文字通りなんらかの産業に関わる施設・設備のことをいう。産業遺産に関してはティッチ(TICCIH:国際産業遺産保存委員会)がイコモスのアドバイザーとなっており、ティッチは2003年にニジニータギル憲章を定めて定義しているので抜粋してみよう。

■産業遺産の定義
  • 産業遺産は、歴史的、技術的、社会的、建築学的、または科学的な価値のある産業文化の遺構で構成される。これらの遺構は建物や機械、工房、工場、製作所、炭坑や加工・精製所、倉庫や保管所、エネルギーの発電、送電、使用する設備、輸送と関連するすべての基幹施設、加えて住宅や宗教の礼拝、あるいは教育といった産業に関わる社会活動のために使用された施設からなっている。
対象となる主な時代区分は、産業革命初期にあたる18世紀後半から現在までとなる。

工場や倉庫・炭鉱など、産業に関わる遺産はその価値がわかりにくいうえに、使用が終わると即座に売却・改修・解体されることが多いため、通常の文化遺産よりも保存が難しい。このため近年の建物であってもすばやくその価値を見出して保護することが必要とされている。
 

20世紀建築とは何か?

スペインの世界遺産「アントニオ・ガウディの作品群」、サグラダファミリア

スペインの世界遺産「アントニオ・ガウディの作品群」、サグラダファミリアの生誕のファサード。いまだ建築中で、完成予定は2026年

20世紀建築とは、そのまま20世紀(1991~2000年)に建てられた建築物・構築物を示す。文化遺産といえば歴史ある建物というイメージがあり、おかげで新しい建物には注目が集まりにくかった。そんな先入観にとらわれることなく、20世紀の価値ある物件を見出し保護しようという意図でクローズアップされた。

先の産業遺産のようなものから「ワイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」(ドイツ)や「シドニー・オペラハウス」(オーストラリア)のようなアーティストによって造られた作品、「カラカスの大学都市」(ベネズエラ)や「ブラジリア」(ブラジル)のような大学や都市、「原爆ドーム」(日本)や「アウシュヴィッツ - ビルケナウ、ナチスドイツの強制絶滅収容所[1940 - 1945]」(ポーランド)のように戦争の痕跡をとどめる負の遺産まで多種多様だ。
 

キング・オブ・文化遺産

中国の世界遺産「泰山」

道教五名山(泰山、衡山、嵩山、華山、恒山)の最高峰、中国の世界遺産「泰山」。泰山は「タスマニア原生地域」と並び、もっとも多くの登録基準(7項目)を満たす「キング・オブ・世界遺産」でもある

最後に、文化遺産の6つの登録基準すべてを満たす世界遺産を紹介しよう。該当の世界遺産はなんとたった3件。泰山は複合遺産だ。

■ベネチアとその潟
イタリア、1987年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)
118もの島からなるラグーナ(潟)で、この湿地に杭を打ち、それらを400もの橋でつないで街を造り上げた。海と陸、東洋と西洋、キリスト教とイスラム教が交わる場所にあり、それらをつなぐ地中海貿易を牛耳る海洋都市国家として君臨した。

記事はこちら>>ベネチアとその潟/イタリア

■泰山
中国、1987年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)、自然遺産(vii)
道教五名山(泰山、衡山、嵩山、華山、恒山)の中でも最高といわれる山。かつてはここでは皇帝が天に祈りを捧げる封禅の儀式が行われており、秦の始皇帝をはじめ数多くの皇帝がここを訪れて宮殿や祠を整備している。道教・仏教・儒教共通の聖地であるため自然も手つかずで残されている。 

■莫高窟
中国、1987年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)
500以上に及ぶ石窟が鳴沙山の断崖のあちこちに掘られており、2400以上の仏像が安置され、仏教の世界観や曼荼羅を表現した極彩色の壁画で覆われている。魏晋南北朝時代から元代まで、約1000年にわたる時代時代の仏教美術が凝縮されている。

記事はこちら>>敦煌・莫高窟/中国

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