私達が納めている所得税・住民税には「損益通算」という制度があります。この損益通算は、非常に簡単に説明すると黒字と赤字を相殺して黒字を減らしてもいいですよということになります。

例えば、会社員の人であれば、給料の部分は黒字(原則として、給料は赤字になりません)ですが、自宅を売却したら赤字が出たような場合を考えてもらうと分かりやすいと思います。

給料からは毎月、所得税が天引きされていて年末調整により勤務先で税金精算が行われています。しかし、年末調整は「今年の収入が、当社からの給料のみ」と仮定して、税金の計算を行います。

したがって、給料の黒字と自宅の赤字を相殺できれば、給料から天引きされていた税金が戻ってくるのです。

さて、サラリーマン・マイカー税金訴訟とは、給料とマイカーの譲渡損を損益通算し、税金を取り戻そうとした申告を、税務署が認めなかったため最高裁まで争われたものです。

そもそも、なぜ税務署が損益通算を認めなかったかというと、損益通算は「別荘などの保養を目的として所有する不動産」や「生活に通常必要でない資産」など一定の資産の譲渡による損失については、適用が受けられないことになっているのです。

また、「生活に通常必要な動産」の譲渡については、利益が出ても税金を課税しない非課税所得にしているため、損失が出ても損益通算は認められていません。

ここまで読んで「それじゃ、生活に通常必要でない資産も生活に通常必要な動産も、どっちも譲渡損が損益通算できないということになる。税務署が認めないのも当然だ。」と考えた人もいるのではないでしょうか?

しかし、所得税法でいう「生活に通常必要でない資産」とは「競走馬」「別荘などの不動産」「生活に通常必要な動産に該当しない動産」の3種類に限定されているのです。
ゴルフ会員権やレジャークラブの会員権などは、普通に常識で考えれば「生活に通常必要でない資産」に該当しますが、これらの資産は「動産」ではありませんから、譲渡損が生じた場合には、損益通算の適用を受けることができるのです。

ところで、この訴訟を起こしたX氏は、マイカーを主に通勤に使っていたので「生活に通常必要な動産」「生活に通常必要な動産に該当しない動産」以外の動産であると主張していましたが、結果は税務署の勝訴に終わりました。

学説的には資産を「生活の必要なもの」「生活に必要でないもの」「その他のもの」に区分する3分説という考え方があるため、納税者の主張もまったく根拠のないものではないのです。

例えば、プロのピアニストが所有しているピアノは「事業に必要な資産」であって、「生活の必要なもの」にも「生活に必要でないもの」にも分類されず、損益通算の対象になるのです。

結果的に敗訴にはなってしまいましたが、会社員の通勤用自動車は「収入を得るために必要であることを認めてくれー」という主張は、非常に意義のあるものだと思います。

また、個人で商売を行っている人の業務用車両や交際費が必要経費になることに比較し、あまりにも給与所得者の租税計算が画一化していることも、問題の一因だったのではないでしょうか。

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