定年・退職のお金/定年退職前後にやるべきお金の手続き

年金と失業給付の手続きは同時でもいいの?(2ページ目)

現在、退職年齢は60~65歳前後に流動化しています。60~65歳未満で退職すると雇用保険から基本手当(失業給付)が給付され、老齢厚生年金との併給調整が行われます。65歳以上で退職すると、年金と「高年齢求職者給付金」という一時金が支給されます。

大沼 恵美子

執筆者:大沼 恵美子

貯蓄ガイド

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失業給付と年金の「事後清算」とは

「1日でも基本手当(失業給付)の給付があった月は年金がストップする」ということは、受給開始日に注意しなければ、ひょっとしたら損をする可能性があるかもしれません。

この不安は、失業給付の受給終了後の事後清算によって、ある程度は解消されます。

事後清算とは、「実際に失業給付を受給した日数÷30日」で月単位に換算し直し、実際の年金支給停止月数と比較し、年金停止月数のほうが多い場合には、その月数分の年金を遡って支給することです。

「月単位に換算」とはどういうことでしょうか。端数が出た場合、その端数は1カ月とカウントするということです。例えば、失業給付を126日受給した場合には「126日÷30日=4カ月、端数=6日=1カ月」、つまり5カ月分の年金がカット対象となるのです。6日間の失業給付を受給する代わりに1カ月分の年金がカットされるのは、ちょっとつらいですね。
基本手当の支給期間が30日の倍数という点では安心かも?

基本手当(失業給付)の支給期間が30日の倍数という点では安心かも?


失業給付と年金の給付額を比較検討しよう

厚生年金に加入していて、かつ一定の要件を満たす人は、生年月日と性別によっては、60~65歳未満でも特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

例えば、厚生年金に38年間加入して定年退職した人が、60歳から受給する特別支給の老齢厚生年金額(報酬比例部分)は、100万~120万円程度です。年金額は年金事務所から送付される「ねんきん定期便」で事前に把握できます。

では、失業給付はいくらでしょうか。失業給付の日額は、賃金日額(=離職した日の直前の6カ月間の賃金(賞与は除く)総額÷180日)の50~80%。ただし60~64歳は45~80%で算出され、上限が設定されています。2014年8月1日現在の60~64歳の上限は6709円です。

●年金と失業給付の受給総額の例
年金120万円、失業給付日額6709円、受給期間150日(5カ月)の場合

・特別支給の老齢厚生年金額(報酬比例部分):120万円×5/12=50万円
・失業給付(150日分):6709円×150日=約101万円

失業給付の受給総額は、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)5カ月間のほぼ倍になります。このように一般的には、失業給付の受給総額のほうが同期間の年金の受給金額より多くなるといわれます。ただし、「自分の場合はどうなのか」は必ず計算して比較しましょう。

65歳以上の退職では年金と一時金が同時にもらえる

60~65歳未満で退職した場合、失業給付と老齢厚生年金の同時受給はできない、と前述しました。では、65歳以上の退職ではどうでしょうか。

65歳以上では失業給付の給付はなく、「高年齢求職者給付金」という一時金が支給されます。給付日額の上限は6440円で、被保険者期間1年未満の人は30日分、1年以上では50日分。最高でも約32万円とがっかりするほど少ないのです。

その代わり、待機期間がありません。また、定年退職は1回、自己都合退職では2回の失業認定で済み、さらに老齢厚生年金との併給調整もありません。65歳まで雇用保険料を納めた人への、国からのささやかなプレゼントといえるでしょう。

失業給付の受給手続きに必要な書類は? 詳しくは次ページ>>>
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