老後の生活資金はいくらいる?
平成24年「家計調査報告(家計収支)」(総務省)によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上、世帯主が無職の世帯)の実収入月額は21万8722円です。年額約262万円で、前ページの「平成23年老齢年金受給者実態調査」65歳~69歳の年金額269.9万円とほぼ同額です。支出(生活費)は27万395円(消費支出23万9878円、非消費支出(所得税や社会保険税など)3万517円)で毎月5万1673円の赤字です。赤字は金融資産の取り崩しや子どもからの仕送りなどで補っているようです。
この赤字補てんのための金額が、老後の生活資金として必要な額になります。では、65歳定年の同い年夫婦のケースで計算してみましょう。
■支出
生活費をいくらにするかが、支出を計算する上でもっとも重要です。一般的には、次のように考えます。リタイア直前の数年間の生活費を把握することが、老後資金の計算の第一歩ということです。
- 夫婦2人時代の生活費は現役時代の70~80%程度
(リタイアしている人は実際の生活費) - 死別した場合は1の生活費の70%
次に、何歳まで生きるかですが、一般的には平均余命を使います。「平成24年簡易生命表」によると、65歳の平均余命は、男18.89、女23.82です。ちなみに、65歳の男女の生存率が約30%になるのは、男88歳、女93歳です。
では、夫婦ともに65歳の高齢夫婦無職世帯の、老後の生活費を計算します。
- 夫婦2人時代の生活費:28万円×12カ月×19年(夫の平均余命)=6384万円
- 妻1人時代の生活費:28万円×70%×12か月×5年(夫と妻の平均余命の差)=1176万円
- 老後の生活費:6384万円+1176万円=計7560万円
■収入
老後のおもな収入は、公的年金と退職金です。公的年金の給付額は、日本年金機構から毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」で各々把握することができます。
ここでは前出の「平成23年老齢年金受給者実態調査」の厚生・共済年金を受給している夫婦世帯の公的年金年金額の平均額278.9万円を使います。妻の遺族年金は、「平成23年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省)より、年額約105万円(月額8万7969円)を、妻の老齢基礎年金額は平成25年満額の約78万円を使います。
<年金受給額>
- 夫婦2人時代の公的年金受給総額:278.9万円×19年(夫の平均余命)=5299万円
- 妻1人時代の公的年金受給額総額:遺族年金+老齢基礎年金=(105万円+78万円)×5年(夫と妻の平均余命の差)=915万円
- 公的年金受給額総額:5299万円+915万円=6214万円
日本経済団体連合会の調査結果を基に、2000万円とします。
<老後の収入総額(平均余命まで)>
公的年金受給総額+定年退職金=6214万円+2000万円=8214万円
老後の生活資金として必要な額は7560万円です。それに対し、退職後の収入総額は8214万円。約650万円も余裕があります。仮に退職金が1300万円(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情調査」高卒の退職金)の場合でも、約50万円不足するだけです。老後の生活資金として必要な額は、退職後の収入だけで対応できる、という計算結果となりました。
では、余裕資金の運用について次ページで考えましょう。