人生90年時代が到来
老後資金計画で先ず調べるのは自分の平均余命です。平成25年簡易生命表によると、65歳男性の平均余命は19.08年、女性は23.97年です。ここで問題です。0歳の人10万人が65歳になったとき何人生存しているでしょうか。答えは、男性8万8041人、女性9万3933人。ほとんどの人が生存しています。その後死亡数がふえ、男性は83歳、女性は90歳でほぼ半減し、3分の1 になるのは男性88歳、女性93歳です。男性は人生90年、女性は95年時代と考えて老後資金を準備する必要があるかも知れません。
老後資金の計算手順
老後の生活資金は、夫婦共に平均余命まで生きると仮定し、リタイア後の夫婦時代と夫を見送った後の妻一人時代の生活を賄う資金です。食費や光熱費、通信費、交通費、交際費、税金、社会保険料など日々の暮らしを維持するために必要なお金ですから、これは確実に準備したいものです。計算式は次の通りです。(1)夫婦時代の生活費=1年間の生活費×夫の平均余命
(2)妻一人時代の生活費=1年間の生活費×70~80%×(妻の平均余命-夫の平均余命)
老後の生活資金=(1)+(2)
*(1)の場合は、「1年間の生活費=現役時代の生活費×80%」とします。
「平成25年 家計調査報告(家計収支編)」(総務省)によると、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の1か月の支出は27万2455円(消費支出24万2598円、非消費支出2万9857円)です。では、夫65歳(平均余命19.08年)、妻60歳(平均余命28.48年)の夫婦世帯の老後のモデル生活資金を計算してみましょう。
夫婦時代の生活費=27万2455円×12ヵ月×20年=約6539万円
妻一人時代の生活費=27万2455円×70%×12ヵ月×(29年-20年)=約2060万円
老後の生活資金=約6539万円+約2060万円=約8599万円
生活資金以外に、レジャー資金や家屋のリフォーム等維持管理費用、こどもへの援助資金、介護資金、葬式費用などの予備費も必要です。これらはライフスタイルや健康状態、家族関係などによって異なりますが、一般に2000万~3000万円と想定する人が多いようです。
前出の夫婦の老後資金は、生活資金を約8599万円、予備費を2000万円とすると約1億円になります。一般に「老後資金は1億円」というのが妥当な数字であるとお分かりになるでしょう。と言っても老後資金として1億円全額を準備する必要はありません。リタイア以降の収入、例えば退職金や公的年金や企業年金等、で不足する分を準備すればいいのです。
老後資金3000万円の妥当性は?
前出の家計調査によると、夫65歳以上妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の公的年金収入は20万309円です。一生涯に夫婦で受給する公的年金を計算してみましょう。夫婦時代の公的年金収入=20万309円×12か月×20年=約4807万円
妻一人時代の公的年金収入=約12万円×12ヵ月×(29年-20年)=約1296万円
夫婦が一生涯に受給する公的年金=約4807万円+約1296万円=約6103万円
*妻一人時代の年金額は、本人の公的年金と遺族年金の合計額
では、老後資金として準備すべき金額はいくらになるのでしょう。それは、「老後の生活費+予備費-(退職金+夫婦で受給する公的年金(+企業年金))」で計算します。
前出の夫婦が準備すべき老後資金は、「老後の生活費+予備費-(退職金+夫婦で一生涯に受給する公的年金)=約8599万円+2000万円-(約2300万円+約6103万円)=約2196万円」になります。
*退職金は「退職金はいくらもらえる?退職金の平均相場」より推定した。
一般に「老後資金として3000万円を準備しよう」というのは60歳定年を想定していた頃の金額です。原則65歳まで継続雇用となった現在は、60歳から64歳の無年金期間の生活費の準備が不要ですので、老後の準備資金は1500万円程度少なくなりそうです。反面、マクロ経済スライドの実施により、将来の年金支給額の価値は現在より低くなる可能性があるので、それを考慮すると、はやり3000万円程度は準備する方がいいような気もします。
教育費や住宅取得費用、老後の生活費は数千万円の単位で、準備期間は30歳~65歳の35年間に集中します。夢や希望は膨らみますが、現役時代の収入は限られています。3大出費のバランスをよ~く考えて計画しないと、人生の後半で「しまった!」という事態になりかねません。アバウトなキャッシュフロー表を作成して資産管理を行うことおすすめします。
【関連記事をチェック】
20代、30代、40代など世代別!2015年の平均貯蓄額