国民年金加入中の夫が死亡、受け取れる年金は何?
死亡一時金、寡婦年金ともそれぞれの受給要件を満たす必要がある
夫自身の老齢年金を受け取ることなく死亡し、妻にも遺族年金が支給されないという、 いわゆる「掛け捨て」の状況において、その救済策として支給されるのが「死亡一時金」と「寡婦年金」です。
死亡一時金と寡婦年金、どちらかしか受け取れない
この死亡一時金と寡婦年金は両方受け取ることはできず、どちらか一方を選択しなければなりません。そうなると、当然ながら「お得」なほうを選択することになるわけですが、どちらを選択したらよいのか迷うところです。まず、「死亡一時金」と「寡婦年金」の給付内容を比較する必要があります。
●死亡一時金
1回きりの給付で、保険料納付済期間の長さにより、12万円から32万円。
●寡婦年金
60歳から65歳になるまでの5年間で、夫が受け取れたであろう老齢基礎年金額(第1号被保険者期間部分)の4分の3。仮に、保険料を30年間(360月)納付していたとすると、44万円ほどとなります。
受け取れる額だけ見ると、「寡婦年金」の圧勝だが…
一時金で最大32万円の死亡一時金に対し、夫が受け取れるはずだった老齢基礎年金額の4分の3を5年間受け取れる寡婦年金のほうが、受け取れる額では圧倒しています。どちらの受給要件も満たしていて、選択するなら誰でも「寡婦年金」を選択するはずです。それだけで話が済んだら話は簡単で、記事にする必要もないのですが、受取額で圧倒している「寡婦年金」には死亡一時金にはない条件が課せられていて、場合によっては、死亡一時金を選択するほうが得な場合があり得るのです。
妻が年金を繰上げ受給していると話は別
その条件とは、受け取る側である「妻」の要件で、具体的には、「妻が(妻自身の)老齢基礎年金を繰上げ受給していないこと」です。要は、自分自身の老齢基礎年金も繰り上げてもらいながら、寡婦年金も受け取ることができないということです。寡婦年金を受け取っている妻が自分の老齢基礎年金を本来の65歳で受け取れば何の問題ありません。
繰上げ受給をした場合でも死亡一時金を受け取る要件には影響を与えません。ですから、どうしても自分の老齢基礎年金を繰上げ受給しようと思うなら、死亡一時金を受け取っておくというのもひとつの方法かもしれません。寡婦年金の額よりも繰上げた老齢基礎年金の方が額が多い場合は、こういった方法もあり得ます。
妻自身が老齢厚生年金を受け取れる場合はどうなる?
死亡一時金は原則として3年以上、寡婦年金は25年以上の第1号被保険者としての保険料納付済期間が必要 |
- 自身の老齢厚生年金
- 寡婦年金
このケースでは、老齢厚生年金の額と、寡婦年金の額を比べて、どちらか高いほうを受け取ることが「お得」なのです。
老齢厚生年金は、現役時代の報酬額と加入期間によって計算されます。妻が長期間会社員だったような場合は、老齢厚生年金の額も多くなります。
仮に「老齢厚生年金を選択しても、死亡一時金を受け取ることは可能」ですので、このケースでは死亡一時金を受け取る選択をするのがセオリーでしょう。
死亡一時金と寡婦年金は、「第1号被保険者独自給付」といわれていて、自営業者等第1号被保険者が死亡した場合にのみ受け取れるように思いがちですが、会社員の夫が死亡しても、この独自給付を受け取れる場合があることに注意が必要です。
会社員であった夫が死亡した場合はどうなる?
例えば会社員になる前に自営業者だったようなケースは、自営業者だった間に、それぞれの保険料納付要件を満たしておけば、死亡時に自営業者でなくてもこれら「独自給付」を受け取れる権利が発生します。このケースでは、会社員だった時に死亡していますので、「遺族厚生年金」を受け取る権利も発生します。
そうなると、今度は
- 寡婦年金か死亡一時金
- 遺族厚生年金
- 寡婦年金と遺族厚生年金はどちらか選択
- 死亡一時金と遺族厚生年金は両方受け取り可能
一般的に、寡婦年金よりも遺族厚生年金のほうが額が多い場合が多いですので、「死亡一時金と遺族厚生年金を受け取る」のがお得です。
死亡一時金と寡婦年金は、どちらかを選択したら、一方は放棄しなければなりません。死亡一時金は額はわずかですが、要件が緩やかで、老齢基礎年金を繰上げしても、老齢厚生年金を受け取っても、また遺族厚生年金を受け取ってとしても、受け取れるという便利な面があります。自分の状況をしっかり把握して、お得な選択をしたいものです。
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