「消えた」ではなく「消された」年金記録問題とは
改ざんの手法は、標準報酬月額を実際より低く改ざんするものの他に、勝手に厚生年金を会社ごと脱退させる「全喪」と呼ばれるものがある |
この消された年金記録問題とは、年金記録改ざん問題とも言われていて、厚生年金の算定の基礎となる標準報酬月額の記録を社会保険事務所の職員が意図的に改ざん、もしくは消去していたという問題です。
この「消された」年金記録問題とは、これまでに問題となった「消えた」や「宙に浮いた」年金記録問題とは似て非なる問題と言えます。
「消えた」や「宙に浮いた」年金記録問題は、入力ミスや転記ミスという、いわゆる「事務処理ミス」が主たる原因であったのに対し、「消された」年金記録問題は、社会保険事務所の職員が「意図的に」我々の年金記録を「消してしまった(改ざんしてしまった)」という面で、より悪質性があると言えるでしょう。
さて、当初は組織的関与はなかったとしていたこの問題も、舛添厚生労働大臣が組織的関与を認める発言をしたことで新たな局面を迎えることとなっています。
改ざん問題の経緯とは?
この問題は、ここ最近、連日報道されだしたのですが、つい最近発覚したわけではなく、かなり前から改ざんがあったことは言われていて、当時国会でもこの問題についての質疑があったりしました。しかし、社会保険庁(厚生労働省)は、長年この問題について事実を公式には認めてきませんでした。というか、認めざるを得ない状況まで真剣に議論してこなかったと言うのが実際のところでしょう。
この問題が再びクローズアップされたきっかけは、標準報酬月額の改ざん事例の16件について第三者委員会で訂正が認められたことにあります。年金記録問題に世間の関心が集まる中、公的な機関が改ざんを認めたことで、俄然国会での追及にも力が入り、国もうやむやにすることができなくなってきたわけです。
改ざんの存在が認められたその次の問題は、第三者委員会が記録訂正を認めた標準報酬月額の「改ざん」は、一体「誰が」指示をして、「誰が」行なったのかということになります。
しかし、長年この問題の存在を公式に認めてこなかった国(社会保険庁)は当初、「職員の不正はなかった」という調査結果を公表していました。記録の改ざんができるのは職員しかいないにもかかわらず、認めようとしない社会保険庁の姿勢に批判が集まったことはご存知のとおりです。
その批判から、更なる調査をした結果、18日に改ざんの疑いがある記録が、6万9千件もあり、大臣が組織的関与を認めざるを得なくなったというのが今日までの流れとなります。
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