年金と失業給付、バランスの取れた関係です。

失業給付とは?

「仕事を辞めて、新しい仕事が見つかるまでは失業保険がもらえる」ということを会社勤めをしていると1度くらいは聞いたことがあるかもしれません。ただし、現在は「失業保険」から「雇用保険」に名前が変わり、失業した場合だけでなく仕事を続けている場合でも利用できる制度になりました。

退職後、求職中に受ける雇用保険からの給付を「失業給付」といいますが、働きながらでも雇用保険からの給付を受けられる場合があります。

ただし、定年退職などで仕事を辞めて年金がもらえる世代には、年金と失業給付の間で支給調整が行われます。

そこで今回は、年金と雇用保険の関係を
  1. 退職後の年金と失業給付の調整

  2. 再就職後の給与、年金、雇用保険の調整
から、検証していきます。

退職後の年金と失業給付

退職してから再就職するまでの間、一定の要件を満たせば、雇用保険から失業給付(正式には「基本手当」)をもらうことができます。基本手当は失業していている日ごと1日単位で支給される給付です。もらえる期間は原則、仕事を辞めた翌日から1年以内、何日分もらえるかは仕事を辞めた理由と雇用保険の加入期間によって決まります。

自己都合による退職や定年退職で仕事を辞めた場合は、雇用保険に加入した期間によって以下の日数分の基本手当(基本手当の「所定給付日数」といいます)が支給されます。
 
【基本手当の所定給付日数】
加入期間 1年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
所定給付日数 90日 120日 150日

また、基本手当の支給金額は退職日からさかのぼった6ヵ月間の給与の平均日額(賞与を除く)の45%~80%です。
 
【給与の平均日額と基本手当の給付割合】
  給与の平均日額 給付割合
60歳未満 2,070円以上 4,080円未満 80%
4,080円以上 11,820円未満 80~50%
11,820円※1以上 50%
60歳以上
65歳未満
2,070円以上4,080円未満 80%
4,080円以上10,590円 80~45%
10,590円※2 45%
※1 退職時の年齢により異なる上限額がある
※2 15,060円超は15,060円とする
もし、60歳以降に退職後、年金(老齢厚生年金)と基本手当の両方をもらうことができる場合は、どちらか一方を選択しなければなりません。具体的には、基本手当をもらうと老齢厚生年金が支給停止になってしまうのです。

これは、年金の支給目的が「高齢で仕事ができなくなったための所得保障」であることに対し、基本手当の支給目的が「仕事をする意思と能力がある人のための新しい仕事を見つけるまでの所得保障」であり、支給目的が矛盾するためといわれています。

それでは、どちらをもらうと有利なのでしょうか。事例で考えてみましょう。
例1
田中さん(昭和23年3月24日生まれ、男性)は今年3月末で40年間勤めた会社を定年退職します。定年退職後、田中さんは60歳から報酬比例部分の老齢厚生年金か、基本手当をもらうことができます(生年月日と老齢厚生年金の支給は「年金はいったい、いつからもらえるの?」参照)。年金額を試算してもらったところ、1ヵ月の受取額は約10万円でした。

一方、田中さんの退職日からさかのぼった6ヵ月間の給与の総額は270万円(=45万円×6ヵ月)とします。田中さんの給与の平均日額は
 
270万円÷180日(1ヵ月を30日として計算)=15,000円

先ほどの表より、基本手当の金額はこの平均給与の45%になるので、1日あたりの基本手当の支給額は
 
15,000円×45%=6,750円

1ヵ月(30日)分の基本手当は
 
6,750円×30日=202,500

したがって、田中さんの場合は基本手当を選択した方が受取額は多くなります。
一般的に、定年退職時の給与は高額なので基本手当の支給額も高めになる一方、60歳時点では老齢厚生年金が報酬比例部分のみの支給になるので、基本手当の方が年金より高額になります。ただし、個々のケースによりどちらが高額になるのか異なりますので、あらかじめ確認した方がよいでしょう。

田中さんのように老齢厚生年金より基本手当の支給額の方が高額で、基本手当の受給の申込み(「求職の申込み」という)をすると、老齢厚生年金は支給停止となります。基本手当を受給する間、老齢厚生年金が支給停止されるしくみを詳しくみていきましょう。

基本手当の選択した場合の調整は次ページで