ソフト制作会社を経営するマナブさん。2年前に資金繰りの悪化で会社が倒産し、自己破産をしました。その時どんな事を思い、その後の生活はどうなったのか詳しく話を聞きました。
自己破産までの道
経営が厳しくなっても、現実を受け入れられない葛藤があった。(写真と本文は関係ありません) |
山口
ーーー自己破産にいたるまでは?
マナブさん:
10年前に会社を作って、年商2億円くらいでした。それが2000年に、元請けの会社が倒産して6000万円の支払いがなかったんです。うちの下請けには自腹を切って払いましたよ。その借金と、ベンチャー企業のプロジェクトに参加する費用がかさんで資金繰りが悪化したんです。
ーーー資金繰りが悪化してからは?
このプロジェクトさえうまく行けば返せる、これ位の借金1つ仕事が決まればすぐだ・・・と。銀行、保険会社、公共の融資、取引先、家族、友人、社員、社員の家族、とにかく借りられる所ならどこからでも借りて、倒産するはずがないとばかり思ってました。
ーーー数字の上ではわかっていますよね。
そうです。会計士も弁護士も、資金繰りを考えいろんな方法をシミュレーションして、どう考えても破産しかないとわかっていても、現実を受け入れられなかったんですね。
ーーー決断をしたのは?
頑張ってくれている社員に給料が払えなくて、どうしてお前なんかに払わなきゃいけないんだってヤツに金を払ってる時に、こんなヤツに金払うくらいなら、申し訳ないけどこの会社を無くしてゼロから出直そうと思って。
ーーーその時のマナブさんの生活はどうだったんですか?
会社に寝泊まりしてました。生活の為の借入を、ゴールドカードでキャッシングして、銀行のカードローンの限度額もすぐ一杯になって。それまで一度も借りた事がなかった消費者金融に次々借りて3社、すぐに200万円くらい貸してくれたけど、そうなる前にやめるべきだったんだよね・・・。
ーーー借りれなくなるまで、止められない?
自己破産しかないとわかってはいるんだけど、俺だけは大丈夫だ、他に道があるに違いないって思いながら、神経が焼け切れていくんです。
ーーー神経が焼け切れる・・・。
そう。「こうなったら早めに自己破産した方がいい」っていう目安がわかってればいいんだけど、人がアドバイスしてくれる時には神経焼けきれているから判断出来ないんです。人の大事な金借りて、それで結局自己破産するならもっと早く決断しておけば周りに迷惑をかけなかったのに。
ーーーご家族は?
俺は独身なんだけど、家族は茨の道ですね。実家に借金の電話がかかって来ただけでも、昨日と違う何かが起こってるわけだからもう大変。兄貴は一時具合が悪くなるし、奥さんも「あんたのせいだ」って。人として家族にも信用が無くなったかな。
ーーー辛いですね。
自分も頑張ってるんだから、家族にも理解して欲しいとも思ったけど、ダメなんだね。実家が商売やってるから「うちがお前に貸した金はどうなるんだ?」って。何かあると、お前に金を貸したからいけないんだ、実家の商売がうまくいかなくなったのもお前のせいだみたいに、なんでも俺のせいになっちゃうんだよね。死のうと思ったけど、人間自分の為には死ねないんだね。これ以上家族にも迷惑かけられないと思って。
ーーーその後、どうなさったんですか。
弁護士や知り合いに間に入ってもらって、やっとまともに話が出来たくらい。こういう時は、家族でも間に第三者が入らないとダメだとつくづく思いました。とにかく自己破産しないとどうしようもないし、借りた金の事を含め今度どうするか時間をかけて話し合いました。