不眠・睡眠障害/眠れない・眠りが浅い

中高年の2人に1人は眠り続ける力が老化している

「若いころはどれだけでも眠られたのに、年をとったらすぐ目が覚めてしまう」と嘆いている方へ。安心してください。そう思っているのは、あなただけではありません。ここでは、中高年の不眠についての調査をご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

40歳代以降は長く眠れない

中高年の眠り

年齢とともに眠りが浅くなるのは、自然なことです

製薬会社の MSD が2015年7月に、「中高年の不眠に関する意識と実態調査」を行いました。対象は、全国の40~70歳代の男女8,000人です。調査は、インターネットを通して行われました。

不眠症の症状には、寝つきが悪い「入眠障害」、夜中に目覚める「中途覚醒」、朝早くに目覚める「早朝覚醒」の3つがあります。過去1カ月の睡眠状態について週1回以上これらの症状があったか、尋ねた結果は次のとおりでした。

  • 不眠症状なし 38.0%
  • 入眠困難のみ 34.4%
  • 中途覚醒あるいは/および早朝覚醒 55.0%
  • 3つの症状すべてあり 18.1%

不眠症というと寝つきの悪さが注目されますが、実際には中高年の半数以上が、睡眠を維持できなくなってきている(中途覚醒+早朝覚醒)ことが分かりました。また、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒の3つの症状すべてを抱える人が、中高年の約5人に1人に上りました。

次に、不眠症状の原因について尋ねました。

不安や興奮、緊張やストレス、考え事 50.8%
日中、十分に活動していないため 17.6%
生活のリズムが不規則 15.7%

不眠症状の原因として、半数の人が精神面の影響をあげています。一方、日中の活動量不足や生活リズムの乱れが原因と考えている人は、どちらも2割以下でした。日中に体を動かすことはストレスの解消につながり、眠る前にテレビやゲームをすると脳が興奮して眠れなくなるなど、これら3つの要因はそれぞれに影響を及ぼし合っていると思われます。

不眠症状に合わない薬を飲んでいるかも?

不眠症治療薬

薬を飲むのなら、症状について医師とよく話し合いましょう

医師から不眠症と診断され、不眠症治療薬を飲んでいる人に、不眠症状のあり/なしを訊くと、よく眠れるようになった人は半分以下(44%)しかおらず、6割近く(56.0%)の人で不眠症状が残っていることが分かりました。

現在、飲んでいる不眠症治療薬の種類を尋ねたところ、以下の結果になりました。「GABA受容体作動薬」というのは、従来から使われてきた睡眠薬です。

「新規治療薬」には、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンと同様の働きをする「メラトニン受容体作動薬」や、覚醒機能をブロックする「オレキシン受容体拮抗薬」などが含まれます。

  • GABA受容体作動薬
    超短時間作用型 44.7%
    短時間作用型 36.3
    中時間作用型 21.6
    長時間作用型 2.8
     
  • 新規治療薬など 4.7%

夜中や早朝に目が覚めて困る人は、作用時間が短い不眠症治療薬を飲んでも、あまり効果がありません。超短時間作用型や短時間作用型の薬では、飲んでしばらくすると、薬の効果が弱まってしまうからです。中途覚醒や早朝覚醒の治療には、中時間作用型のGABA受容体作動薬や、オレキシン受容体拮抗薬が適しています。

生活習慣病があると睡眠維持力はさらに低下

夜間頻尿

泌尿器科の病気を治すと、よく眠れるようになることがあります

生活習慣病と睡眠の状態には、深い関係があります。この調査では生活習慣病がある人に、「アテネ不眠症尺度」をやってもらいました。アテネ不眠症尺度は、世界保健機関(WHO)など作った、世界共通の不眠症判定法です。

  • 不眠症の疑いなし 45.7%
  • 不眠症の疑いが少しあり 16.4%
  • 不眠症の疑いあり 20.9%
  • 不眠症あり 17.0%

生活習慣病患者の約5割(54.3%)が、「不眠症」または「不眠症の疑いがある」と判定されました。一方、生活習慣病がない人でのこれらの割合は、44.4%でした。生活習慣病がある人はない人に比べて、10ポイントも不眠症のリスクが高いということです。

生活習慣病がある人の、不眠症状の内訳は次のとおりです。

  • 不眠症状なし 29.8%
  • 入眠困難のみ 39.5%
  • 中途覚醒あるいは/および早朝覚醒 63.2%
  • 3つの症状すべてあり 22.9%

中年以降で生活習慣病を持つ人では、入眠困難の約2倍も、睡眠維持力の低下による不眠があることが分かりました。これらの不眠症状を改善するためには、生活習慣や寝室環境を整えることが基本です。しかし、それでも不眠が良くならないときは、医師に相談して、症状に合った薬を飲むことをお勧めします。

【関連サイト】
MSD 株式会社 「中高年の不眠に関する意識と実態調査」
眠れない・眠りが浅い
睡眠薬・睡眠改善薬・睡眠導入剤

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