マーケティング/マーケティング事例

あなたの会社に眠っている『フルグラ』を探せ!(2ページ目)

カルビーが発売するシリアル『フルグラ』が急成長しています。2012年の売上は前年比1.6倍の60億円。今後は近い将来に200億円までアップさせていく計画です。ただ、この『フルグラ』は最近発売された新製品でなく、今年で25周年を迎えるいわばカルビーの“古株”商品です。今なぜ『フルグラ』が急成長しているのか?カルビーのマーケティング戦略に迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

適切なマーケティングを実践すればどんな古い製品でも蘇る!

カルビーは発売から20年以上経過して伸び悩んでいる『フルグラ』を成長に導こうと、数々のマーケティングを実行に移して、急成長を実現します。それでは、続いてカルビーが実践して成功を収めたマーケティングについて見ていくことにしましょう。

マーケティング成功の秘訣1:経験のないものは実際に経験してもらう

一人当たりの年間購買額がわずか400円というデータが示すように、日本人にはもともとシリアルを食べるという習慣がなく、「シリアル=おいしくない」という好ましくないイメージも定着しています。

そこで、カルビーはまず『フルグラ』のおいしさを実感してもらおうと店頭試食を実施。2011年には100店舗だったものが2012年には10倍の1000店舗にまで拡大します。

この、これまで『フルグラ』を食べたことのない消費者に実際に食べてもらおうという試食が、2012年の売上が1.6倍の60億円にまで急成長する大きな原動力となったのです。

さらにカルビーは規模を拡大して、今年、2000店舗、40万人に試食してもらおうと計画しています。

マーケティング成功の秘訣2:使い方を提案する

フルグラ

『フルグラ』は従来の食べ方に留まらず、新たな食べ方を提案することで重要が拡大した!

通常、シリアルは牛乳をかけて食べる食べ方が一般的ですが、これだけでは多くの消費を望むことは難しいでしょう。

そこで、カルビーは料理レシピサイトのクックパッドと組んでアレンジレシピコンテストを開催。

コンテストでは、『フルグラの「おやつコロッケ」』や『フルグラのいちごババロア』などバラエティに富んだメニューを消費者自らに提案してもらい、他の多くの人々に伝えることにより、従来の利用法の枠を大きく超えたレシピの提供に成功して需要の拡大につなげることができたのです。

マーケティング成功の秘訣3:既存の流通網をうまく活用する

これまで利用しなかった顧客を開拓する際に有効な一つの手段は、新たな流通網を通して新規顧客にアプローチすることです。ただ、ゼロから新たな流通網を築くには大変な労力とコストが必要になります。

シリアルといえば、都会での食べ物であり、マーケット自体も圧倒的に都会の方が大きいですが、スーパーでの棚の取り合いなど、その分競争も激しくマーケットシェアを獲得することも難しいといえるでしょう。

そこで、カルビーは地方の市場に着目し、開拓を図ります。

地方ではスーパーの棚に並んでいてもなかなかシリアルを手に取る顧客は見込めないため、より強力なプッシュ戦略として地元の牛乳配達店と手を組んで各家庭にサンプルを配布することを思いつきます。

牛乳配達店は地方に古くから根付いている流通網であり、既に多くの顧客も抱えています。この既存の流通網とWin-Winの関係を築くことができれば、余分な労力とコストをかけずして流通網を築き新規顧客にアプローチすることも可能になるというわけです。

そして、このサンプル配布でカルビーは、試食と同じく、まずは『フルグラ』を家庭で食べてもらい、継続購入に結び付けていくことを狙っているといえるでしょう。

このように、今後の主力商品と位置付ける『フルグラ』に対して、本腰を入れてマーケティング戦略に取り組むカルビーですが、2014年には100億円、そして近い将来には200億円と『フルグラ』の成長で日本のシリアル食品市場の成長を牽引していくビジョンを描いているのです。

あなたの会社にも『フルグラ』は眠っている?!

カルビーの『フルグラ』は、日の目を見るまでに25年もの歳月がかかりました。

『フルグラ』は、運よく外部の目を通してその素晴らしさが再発見され、マーケティングという息吹を吹き込まれることにより、大きく羽ばたくことができました。

ただ、現実にはその価値をうまく消費者に伝えることができずに、消えゆく製品の数の方が圧倒的に多いのが実状でしょう。

そして、多くの企業では消えゆく製品は早々に諦めて、次々に新製品を開発してヒット商品を狙っていくのです。

確かに新たな製品を開発して市場を切り開くことも、成長を実現するうえでは有効な手段といえますが、もし社内に“お宝”になりうる製品が眠っているようであれば、適切なマーケティング戦略を実行に移すことにより、よりリスクを低くして高いリターンを実現することができることを『フルグラ』の成功が物語っています。

あなたの会社にも『フルグラ』が埋もれていないかを、今一度客観的な視点でチェックしてみてはいかがでしょうか?
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