マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

穴吹のその後 契約者説明会での一問一答(2ページ目)

穴吹工務店の経営破綻から11日後の12月5日、マンション契約者向けの説明会が開催されました。先行きの見通せない説明に、出席者は困惑を隠せません。一体どのようなやり取りがあったのか、一問一答をご紹介します。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

契約者側からの契約解除は「違約金」が発生する(?)


09年12月5日に開催された契約者説明会での出席者からの質問に対し、穴吹工務店側は以下のような回答をしています。


【問】住宅瑕疵担保履行法に定められた保証金の供託(資力確保)は可能なのか?

予算(供託のための財源)を組んでいるので大丈夫だ。同法に基づく契約者への補償が確実に実行されるよう、保証金の供託あるいは保険加入の義務を遵守する。

<ガイドからの補足>
分譲業者が「供託」を選んだ場合、業者は「各基準日」までに新築住宅の供給戸数に応じて必要となる額を法務局などに供託しなければなりません。各基準日とは具体的には、3月31日と9月30日の両日です。法律が施行された後の“最初”の基準日は2010年の3月31日となりますので、たとえ会社更生法の適用申請後でも、この日までに供託すれば間に合うことになります。もちろん、供託のための財源あっての話ではありますが……。

そもそも、住宅瑕疵担保履行法は瑕疵(欠陥)があった場合の救済策です。たとえ倒産企業のマンションであろうと、基本構造部分の施工精度に問題がなければ(=瑕疵は存在しない)法律の出番はありません。買い主からの申し出により契約解除をし、その結果、手付金を没収されたことで損害賠償請求したとしても、この請求権に関し、供託金の還付によって没収分が補てんされることはありません。履行法の対象となる住戸は「引き渡し済みの住戸のみ」だからです。


【問】買い主側から契約解除した場合の預かり金の取り扱いはどうなるのか?

1債権者あたり、その総額が50万円以下であれば支払い(返金)を予定している。逆に、50万円以上の預かり金は返せない。また、会社は再建を目指しているわけで、契約者側からの契約解除は違約金が発生する。

<ガイドからの補足>
会社更生法には「少額債権の弁済」という規定があり、「一定額に満たない債権」=「小額債権」について、債権者を減らして更生手続きの円滑な運営を可能にするため、少額の更生債権を早期に弁済する制度が設けられています。本件では、その一定額が50万円に設定されており、結果、50万円以下の少額債権は再生計画によらずに弁済(返金)される模様です。

一方、買い主に債務不履行があった場合の損害賠償額を予定したり、違約金の額を定めることは宅建業者が売り主となる売買契約では珍しくありません。しかし、いくら再建を目指しているからといって、買い主側からの契約解除に対して違約金を請求するなど言語道断です。「一体、誰が契約解除を思い立たせたのか考えてみろ!」―― と言いたいです。違約金の請求など、許されざる行為です。


【問】なぜ、引き渡し日を確定できない? いつになったら引き渡しができるのか?

対象となるマンションに関し、担保権を有する金融機関が担保解放を拒んでいるからだ。そのため、売り主(穴吹)としては資金実行(決済)前ではあるが、暫定入居を検討している。裁判所も一定の理解を示してくれているので、マンションの名義人(所有権者)は穴吹工務店のまま、契約者には先行入居してもらう手はずを整えている。


【問】予定通りに引き渡しを受けられない人はどうすればいいのか? また、引き渡し日の遅延により発生する追加家賃や、あるいは荷物を預ける場所を一時的に借りたことによる費用は誰が負担するのか?

迷惑をかけた部分については、何らかの救済ができればとは思っている。


【問】入居後、マンションの管理はどうなるのか?

受託管理会社の穴吹コミュニティは黒字企業であり、予定している管理サービスの内容が今回の騒動で低下する心配はない。

<ガイドからの補足>
マンション管理を受託する管理会社が「売り主の系列」であることが多いせいか、マンション管理の主体者(当事者)が誰なのか、誤解している節が多々、見受けられます。

サービスはサービスでも、アフターサービスは「売り主」と「買い主」の間の契約です。これに対し、管理サービスは「管理会社」と「管理組合」の間の契約です。ここに売り主は登場しません。つまり、売り主が上場企業であろうと破綻企業であろうと、管理会社さえしっかりしていれば、管理サービスが低下することは考えにくいのです。

もちろん、「考えにくい」だけで「低下しない」とは言い切れませんが、仮にサービス品質が低下しても、その時は管理会社を変更すれば問題は解決します。売り主は変更できませんが、管理会社は変更できるのです。管理会社に関しては、いくらでも“やり直し”(変更)がきくことを知っていると、不安は和らぐものと考えます。


【問】前社長が会社更生法の申し立ての取り下げに動いているが、その行動については?

前社長の動きは理解できない。現在、社員一丸となって立て直しに一生懸命になっている。前社長がどう動こうとまったく問題ない。


※ お困りのマンション契約者の方、ご不安・ご心配があれば、ご遠慮なくお問い合せください。どのようなご相談でも親身に対応いたします。
(プライバシーの心配はいりません。秘密厳守いたします。)


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