マンション購入の失敗・トラブル

更新日:2009年05月18日

さらば欠陥住宅!住宅セーフティネット大全

悲しいことに、「売り主が倒産することなど、あり得ない」……こうした性善説による発想はすでに通用しなくなっています。自己責任原則にのっとり、欠陥住宅への予備知識(対策)を蓄えておくことが欠かせません。


突然の売り主倒産。消費者にはどのような救済制度があるのか。
耐震強度偽装事件(05年11月)が発覚してから3年半、日本の住宅建築制度は大きく、その仕組みを変えようとしています。

まず、「日本の住宅は安全・安心」という安全神話を根底から覆(くつがえ)し、性善説に立脚した我が国の建築システムを揺さぶった“姉歯ショック”を契機に、2007年6月、建築基準法が改正されました。建築確認を厳格化するために「構造計算適合性判定制度」(いわゆるWチェック)を創設し、また、3階建て以上の共同住宅には中間検査を義務付けるなど、再発防止に向けた施策がなされることとなりました。

と同時に建築士法も改正され、いよいよ今年5月27日からは「構造設計一級建築士」と「設備設計一級建築士」の専門資格者制度がスタートします。この制度は、一定規模以上の建築物の設計に当該専門資格者による法適合確認を義務付け、これにより設計上のミスや改ざんなどを未然に発見できるようにするものです。どちらも、欠陥建築物を生み出さないための水際対策といえるでしょう。

しかし、これだけではセーフティネットの完全整備には至りません。今年1月と3月に共に自己破産した注文住宅メーカーの「富士ハウス」と「アーバンエステート」の破綻劇からは、新たな課題が浮き彫りになりました。どちらも契約形態が請負契約だったことから、宅地・建物の取引(売買や賃貸・媒介)を規制する宅建業法が適用されず、多額の前払い金を要求されるケースが少なくなかったといいます。

それだけに、同じ被害に遭わないためには、住宅の建築・購入に関するセーフティネットの仕組みを頭に入れておくことが欠かせません。そこで今回、欠陥住宅および住宅保証に関する制度を体系的にまとめてみました。断片的な知識では応用力が働きません。横断的に内容を理解することで初めて、転ばぬ先の予備知識として役立つことになります。

容易に発見できない「隠れた瑕疵」のみが担保責任の対象


まずは欠陥住宅の強い味方、瑕疵担保責任からご説明します。瑕疵担保責任とは、契約の目的物に隠れた瑕疵が存在した場合、売り主あるいは工事請負人が、買い主あるいは工事注文者に対して負う責任のことです。そもそも「瑕疵」とは「欠陥」のことで、以下のような欠陥が瑕疵に該当します。


 ・目的物が取引上、通常有するべきものとされる品質や性能の欠陥
 ・当事者が契約上、予定した使用目的に対する適正の欠陥
 ・売り主が特に保有すると保証した品質や性能の欠陥

より具体的なレベルに落とし込むと、雨漏り・白アリといった構造上の不具合や土壌汚染など「物理的な欠陥」が最も一般的です。(被害者には申し訳ありませんが)耐震性能が極めて劣ったヒューザーマンションは究極の欠陥住宅となってしまいました。また、重要事項説明が不十分だったようなケースは「法律的な欠陥」とされます。都市計画で道路用地として予定していた敷地を、その事実を告げずに売却したとして、その取引が「隠れた瑕疵」と認められた判例があります。

さらに、「心理的な欠陥」も今では瑕疵担保責任の1つとして認められるようになりました。自殺物件や暴力団組員が居住するマンションの売買が、その典型例です。こちらも裁判で争われ、被害者が勝利を勝ち取ったことで、広く「心理的な欠陥」が認知されるようになりました。

このように、時を重ねるごとに瑕疵担保責任の応用範囲は広げられ、消費者には有利な方向に向かっています。しかし瑕疵担保責任は、その瑕疵が「隠れたもの」でなければならない点は注意が必要です。「隠れた」とは、「買い主が通常、要求される注意を払っても発見することができなかった」という意味です。なんでもかんでも瑕疵の範囲に含まれるわけではありません。生活を始めてみて、ようやく気付く重度の欠陥でなければならないのです。決して瑕疵担保責任は万能薬ではないことを知っておく必要があるでしょう。後述する「アフターサービス」と混同してはなりません。

売買契約では「修補請求」が認められない


では、どのような結果が期待できるのか、続いて瑕疵担保責任の効力について見ていくことにしましょう。契約形態が「売買契約」か「請負契約」かによって、下表のような違いが生じます。

契約形態別 民法における瑕疵担保責任の効力

分譲マンションや建売住宅の購入といった売買契約では、隠れた瑕疵が見つかった場合、買い主は売り主にまず損害賠償を請求することができます。しかし、それだけでは十分でなく、契約の目的が達成できないときは、当該契約を解除することも可能です。他方、欠陥部分を修理するよう要求する権利(修補請求)は認められていません。

これに対し、請負契約では隠れた瑕疵が見つかった場合、工事の注文者は請負業者に対し、修理代金が多額でなければ相当の期間を定めて修補請求することができます。また、注文者は瑕疵の修補に代えて、あるいは、その修補とともに、損害賠償の請求をすることも可能です。

しかし、請負契約の解除は認められません。「建物その他の土地の工作物については、この限りでない」という例外規定が盛り込まれているからです。同じ請負契約でも、たとえば洋服をオーダーメイドするような仕事内容であれば、その洋服が欠陥品だった場合、契約を解除できます。しかし住宅(建物)については、せっかく出来上がったものを使用せずに取り壊す(=契約解除)のはあまりにも無駄(ロス)が多すぎます。そのため、経済合理性の観点から住宅を除外することとしています。やや難しい話になりましたが、瑕疵が見つかったら消費者は何を要求できるのか?—— 正確に頭に入れておきましょう。


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平賀 功一

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