マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

マンション駐車場の権利に意外な落とし穴

マンションの駐車場は共用部分で、抽選か順番待ちかの違いはあるにせよ、いずれは誰でも使えるもの。そう信じているあなたは、思わぬ落とし穴にはまるかもしれません。駐車場を使う必要がない人も要注意です。(2017年改訂版、初出:2008年9月)

執筆者:平野 雅之


マンションの駐車場といえば区分所有者全員の共用部分で、駐車場使用契約にもとづいて一定の人がこれを使用し、毎月の駐車場使用料は管理組合へ……。これが当然であり、「法律でそう決められている」と考えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、実際にはそうなっていないマンションも意外と多く存在するのです。とくに、ちょっと古めのマンションの場合には十分に注意したいところですが、購入するときに重要事項説明を受けても、その問題点に気付かないままで受け流してしまう買主も少なくありません。

今回はそのようなマンション駐車場の権利に関する “例外” について、私がこれまでにみたことのある事例を中心に紹介することにしましょう。駐車場を使う予定がない人にも大きな影響があるはずですからご用心!

なお、駐車場の区画数がマンションの住戸数よりも少ないケースでの問題点を主に挙げていますので、全戸に駐車場が用意されたマンションなどでは該当しない部分もあります。


敷地そのものが分割されていた事例~その1

一見するとマンションの敷地内でありながら、駐車場部分がまったく別の土地になっているものがありました。

これが当初から別の土地であれば「隣接する敷地外駐車場を借りている」のと同じことになりますが、マンションの建設後に分筆されたものであれば大問題です。建築確認を受けたときよりも敷地面積が減ることで、将来の建て替え時に大きな支障を来たすことにもなりかねません。

駐車場部分が別の土地になっている事例の図

私が出くわした事例は建設後の分筆で、そのマンションの分譲業者が駐車場部分の土地所有者となり、毎月の駐車場使用料はその分譲業者が徴収していました。つまり、分譲業者の毎月の収入源として駐車場が使われていたわけです。

その業者は「建て替えのときには駐車場部分をマンションの敷地に加える」という説明をしていたように記憶していますが、そのような保証はどこにもありません。

別の土地になっているかぎり、駐車場部分が第三者へ転売されることも十分に考えられます。

また、当初から別の土地であった場合(もともと隣接地だった場合)は、分譲業者や関係者の好意(?)でマンションとの一体整備がされ、そのマンションの居住者だけに貸してくれているともいえますが、権利が不安定なことに変わりはありません。

それがいつ第三者に転売されるか分からず、駐車場がなくなっても文句はいえないでしょう。


敷地そのものが分割されていた事例~その2

上の事例からさらに一歩「進んで」というよりも「踏み外して」というべきかもしれませんが、駐車場の区画割りに合わせて敷地を細かく分筆し、一つひとつの土地を特定の区分所有者に販売した事例もありました。

駐車場部分の土地が分筆されレ売られた事例の図

マンション住戸の分譲と駐車場区画の土地販売がセットで行なわれ、駐車場部分の販売代金は当然ながら分譲業者の売り上げとして扱われたのだろうと推察されます。


駐車場の権利が販売された事例

一般的なマンションでは駐車場を使用する権利に一定の期限(契約期間)があり、また、その使用者がマンションの住戸を売却すれば駐車場の使用権は消滅するものです。

その後は順番待ちか抽選か、マンションによって方式は異なりますが、できるだけ多くの人が公平な立場で駐車場を使用できるようになっています。

ところが、この駐車場の権利を「特定の住戸に付随する永久の権利」として販売した事例は比較的多くみられます。

つまり、たとえば301号室の所有者が同時に駐車場の権利を持っているとすれば、これを中古マンションとして購入した人にもその権利がついていくわけです。

逆に駐車場の権利がない住戸を購入した人は、マンション敷地内あるいは屋内の駐車場を永遠に使うことができません。

その住戸を中古マンションとして購入した次の所有者も同様ですから、住戸ごとの資産価値の格差、あるいは売りやすさの違いとなって表れてくることもあるでしょう。

このようなケースではたいてい当初の分譲時に、マンションの購入者が「駐車場の権利代」として数百万円を支払っています。

「毎月の駐車場使用料の一括前払い」という性質も考えられるため、それがマンションの管理組合の会計に組み入れられていればまだマシですが、実際には分譲業者の売り上げとなっていることも少なくないようです。

なお、マンションによっては1階の住戸ごとに専用庭の一画が個別の駐車場となっている場合もあります。このようなときは、その住戸の所有者が独占的に駐車場を使用することに合理性があり、とくに問題はないでしょう。


駐車場が登記された事例~その1

屋内の駐車場も一定の要件を満たしていれば、区分所有権の対象物として登記をすることが可能です。このような登記をしたうえで、壁で仕切られた駐車場の一つひとつが販売された事例もありました。

つまり、他の一般の住戸と同じように、マンションの駐車場部分にもそれぞれ所有者が存在するわけです。

当然ながらその駐車場を使用する権利は所有者に限定され、中古マンションとして住戸部分を売却するときには、同時に駐車場も売られることになります。

マンション1階の区分された駐車場

マンションの1階が1台分ずつ仕切られた駐車場の場合に、一定の要件を満たせば一つひとつ登記が可能(写真のマンション駐車場はイメージです)


このような場合に、他の一般住戸における管理費修繕積立金に相当するものを駐車場の所有者から徴収しているかどうか(住戸部分の管理費・修繕積立金に加算しているかどうか)はケースバイケースです。

また、同じマンション内に居住する他の区分所有者に駐車場の権利を売るのならまだしも、まったく関係のない外部の第三者に駐車場の区分所有権だけを売ってしまうこともあり得ないわけではありません。

なお、次の事例を含め、駐車場がマンションの共用部分として区分登記されているのであれば問題はありません。登記されていること自体が悪いのではなく、それが特定の者の所有となっている場合に問題があるわけです。


駐車場が登記された事例~その2

以前に、あるテレビ番組でも何度か取り上げて問題提起されていましたが、マンションの1階あるいは地下の駐車場全体が区分登記され、それをマンションの区分所有者ではない第三者が所有しているケースもいくつか見受けられます。

マンション1階部分の駐車場

マンションの1階や地下の駐車場がまとめて登記され、第三者の所有となっていることも(写真のマンション駐車場はイメージです)


このような場合、たいていは分譲業者または管理会社、もしくは等価交換などで建てられたマンションであればもとの地主が駐車場全体の権利をもっています。

駐車場部分の所有者が分譲業者または管理会社のとき、(ある程度大きな会社ならこのようなことはしませんから)マンションの住民から集めた毎月の駐車場使用料が、会社の運転資金として流用されていることも多いでしょう。

私がみた事例では、駐車場部分の修繕や整備などがなかなか行なわれず、地面のコンクリート舗装が荒れ放題になっているものもありました。

また、テレビ番組で扱われていた事例では、登記の要件を備えてないはずの屋外の駐車場区画が区分登記されていたようです。マンションの住民が気付かないところで思いがけない事態が進行していることもあるでしょう。


問題のある駐車場、その解決は困難!

原則どおりになっていない「問題のある駐車場」の事例をいくつか紹介しましたが、これらはいずれも過去の一時点で終わった問題ではなく、マンションによってはこれからもずっと続くものです。それを解決するのは容易なことではありません。

なかには住民の合意により管理規約を改正することで解決できるケースもありますが、権利を失う側からみれば逆の意味で大問題であり、金銭的な補償を求められることも多いでしょう。

また、駐車場部分の土地を分筆したり、地下駐車場を増築したりすることで建築基準法に抵触する場合はあるにしても、駐車場を特定の者の専属的な権利とすること、あるいは区分登記をして特定の者が所有することについては、法律で禁止されているわけでもありません。

そのため「これは合法的なものだ」と開き直られれば、反論することも難しいでしょう。

問題の解決のため、マンションの住民みんなでお金を出し合って、駐車場の権利を買い取ったという事例を聞いたこともありますが、それを実現させるのも相当な困難が伴うはずです。

さらに、問題解決のために費用がかかる場合に、車を持たず駐車場を使う予定のない人も均等に負担をしなければ、マンション住民全体の公平性が保てず、別のトラブルを引き起こすことにもなりかねません。

それ以前に、本来は必要のない出費を強いられることで、理不尽な思いが募るばかり……。

このような事態に巻き込まれないためには、重要事項説明のときにしっかりと確認をすることが大切です。

駐車場の権利はどうなっているのか(マンションの共用部分となっていることが基本)、駐車場の使用者はどう決めるのか(抽選や申込順など公平性のあることが基本)、駐車場使用料の帰属先はどこか(管理組合の収入とすることが基本)などについて、納得ができるまで宅地建物取引士から説明を受けるようにしましょう。

自分には駐車場が必要ないという人も、この確認を怠ってはいけません。


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