本来であれば同じはずですが・・・
客観的な基準であるべき過失割合が、同一事故の対人・対物で異なるということは、本来であれば起こりえない話です。ところが、実際には人身事故の被害者は、治療のために仕事を休まなければならなかったり、治療後も後遺症に悩まされたりと、様々な不利益を受けることが多いため、被害者保護の観点から、被害者の過失について特に有利に判定される傾向があります。一方で物損事故については、このように考慮すべき事情は基本的に存在しませんので、客観的な基準を厳密に適用したとしても不都合は生じないと思われます。そこで結果として、同一の事故なのに人身事故と物損事故の過失割合が異なるという現象が起こるわけです。
自賠責では大きな過失のみ考慮されます
ちなみに同様の理由から、被害者救済をその趣旨とする自賠責保険では、被害者の過失について任意保険の対人賠償よりもさらに緩やかな判断がなされています。そもそも強制保険である自賠責保険には、大量に発生する請求を公平かつ迅速に処理しなければならないという事情もありますので、保険金支払の際に被害者の過失を考えるにあたっては、先に述べた基準をもとに独自の判断基準が用いられることになります。
そして通常は、被害者によほど大きな過失(7割以上)がないかぎり、支払われる保険金が減額されることはないと考えてよいでしょう。
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