中毒その15●自分が運用がうまいと過信している人
あなたは自分の運用はうまいと思いますか? 未経験の人は「自分は経験はないけど、きっとうまくやれるはず!」と思って運用にチャレンジするはずです。同時にすでに運用を経験している人であっても、大損して手を引いた人でなければ、「自分は結構うまいんじゃない?」「今はちょっと冴えないけれどきっとうまくやれるよ」なんて思っているのではないでしょうか。理屈でいえば、「うまいと思う人」と「下手だと思う人」はほぼ同数になりそうなものですが、統計上「うまいと思う人が」圧倒的に多いといわれています。もちろん、自分自身の能力や経済の見通しに自信がないとリスクのある投資にチャレンジすることは難しいので、「うまいと思う人」が多くなる傾向はあるかと思います。しかしながらそれ以上に極端に自信家が多くなる理由はなんでしょうか。それは、私たちは投資をする際に「自信過剰(overconfidence)」に陥っているからです。これ、まさにマネー中毒の一種です。
自信過剰であることの危険性は何より「金融機関にカモられる」可能性が高まるということです。直接カモられるパターンとしては「無駄な売買手数料を払う」ことで金融機関のビジネスに貢献してしまうパターンがあります。何度も売買をして儲けようとするあまり、結果として手数料ばかり払ってあまり儲かってない、というループに陥ってしまいます。また、新しい商品が販売されると良さそうに見えてついつい購入してしまいます。広告宣伝費を投じた金融機関は大喜びしてしまうわけです。
また、市場から直接カモられるパターンもあります。あなたが短気になって売買をしてしまった損(売買で実現化した損もあれば、売らないで保有しておけばもっと値上がりしたものをみすみす手放した損もあります)は、多くの場合機関投資家(プロ)の儲けに貢献してしまいます。中長期的にどっしりと構えている投資家や巨額の資金をベースに短期的に売買できる投資家にとって、焦って値を崩して売りにくる個人投資家や、一時的な上昇に慌てて買いに走る個人投資家は絶好のカモなのです。
もし、あなたが自信過剰という風邪にかかっているのでしたら、デトックスをしてみましょう。ゆっくり深呼吸して、「自分は運用がうまいと思いたいが、正直わからなくて不安だ」と認めてしまうのです。私自身も「分からない」と認めることから始めるようにしています。
でも、もし運用がうまくないとしたら、どうすればいいでしょう。1つは「大損しない方法を考える」ということです。そのためには分散投資が効果的です。株式だけでなく債券も一緒に保有する、国内だけでなく海外にも運用をする、同じ株式投資でも複数の業種の銘柄に分けて保有する、などの方法があります。一点勝負は大勝利の可能性と大負けの可能性が同居しています。それより堅実に勝っていく方法を考えてみてはどうでしょうか。
次に「どんなときもかかる負担を減らす」ことが効果的です。投資にかかるコストとしては購入時と売却時にかかる手数料と売却時にかかる税金(儲かったとき)があります。投資信託であれば保有期間中、運用手数料(信託報酬)を払わなければなりません。安い手数料の証券会社や商品を選べば同じ運用でもその分トクをします。同じ儲けであれば売買頻度が少ないほど手数料を節約できます。手数料を多く払ったから、運用がよくなることはありません。
市場ではたくさんの機関投資家(プロ)が何億円、何兆円という資金を元手に売買をしています。また、仕事の合間に運用をする我々と違い、彼らは運用そのものが仕事です。かける時間も違います。私たちだけがうまくいくなんて冷静に考えてみれば思いこみにすぎません(そうありたいとは願いますが!)。しかし、インデックス運用などをベースにコツコツ投資を続けていけば、プロが必死に作ろうとする市場全体の流れに乗ることはできます。年率○百%の運用は無理でも、きっと株式市場の平均くらいは稼げるはず。それでも預貯金より大きく上昇してくれるに違いありません。
自信過剰にならず、しかし市場を諦めず! デトックス後の運用をのんびり愉しんでみてください。
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