その5:もし、銀行に貯金してはいけない状況があるとしたら?
私も銀行に預けるだけ、という状況については意味がないと思っています(この点では同書の意見に同意します)。せっかくですので、銀行に貯金をしてはいけない状況について考えてみたいと思います。具体的には「銀行にしか口座がない」という状態です。つまり、全額を銀行に預けている状態です。預けている金額の多寡にかかわらず、これは改善すべきです。ひとまずは、「a)銀行で投資信託を購入する別口座を作ってリスク資産を購入」するか、「b)証券会社で証券口座を作ってリスク資産を購入」してみるといいでしょう。無理に貯金のすべてを投資に振り分ける必要はありませんから、一部について移し替えてみればいいでしょう(貯金を残して、一部をリスク資産に振り向けて運用したほうがよいことは、前のページで述べたとおりです)。
ところで、特に急いで欲しいのは、50歳代の人など、定年退職を間近に控えている世代で銀行以外の付き合いがない人です。60歳になって、退職金が手に入り、数千万円の資産運用を行わなければいけなくなったとき、初めて証券口座を開設しても、怖くてリスク運用はできないと思います。今から10万円でも5万円でもいいので、証券口座を開設し、リスク商品を購入し、投資経験を得ておくことが将来とても役立ちます。
もちろん、20歳代・30歳代であってもためらう必要はないので、証券口座を作ってみましょう。証券口座を作るって何といってもカッコイイと思いますし、口座を開くことでいろいろな情報が手に入るようになります。実際には数万円しか入れていなくても、口座を抹消されることはありませんので、まずは口座開設からスタートしてみましょう。
私はよくセミナーなどでは「銀行の口座を2つ、できれば都銀等のメインバンク1つに、ネットバンクを1つ。そして証券口座を1つは作ろう」といいます。銀行が破綻する懸念はもうあまりないとはいえ、可能性がゼロとはいえませんので、自衛策としても銀行は2行以上とおつきあいすることも検討してみてください。
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さて、「お金は銀行に預けるな」はウソだ、と題して銀行にお金を預けておくことの意義を述べてきました。リスク資産の運用は結構ですが、銀行をもっと活用(利用、といってもいい)することも強く意識するべきだと思います。
銀行が私たちの預金で儲けていることは間違いありませんので、私たちは銀行に頭を下げる必要はありません。我々はお客様ですから、堂々と銀行を利用すればいいのです。銀行を利用することで、資産運用もまた、うまく進めていくことが可能になります。
「お金は上手に銀行に預け、銀行を利用しよう」
「そして銀行を利用しながら、リスク資産の運用にチャレンジしよう」
それが私の伝えたい結論です。……まあ、書籍のタイトルとしては長すぎてNGでしょうけれど、ね。
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