消費税は本当に不公平なのか?
年金保険料を消費税化するような仮定について議論されたものを読むと、必ずといっていいほど「不公平感うんぬん」という話題になってしまいます。しかし、制度が変わったことで、誰かが得をする感じがして、誰かが損をする感じがすることは当たり前のことです。みんなが得をする変更は要するに「ばらまき」というやつです。
年金の議論についても同様に変化して損をする人が生じることばかり取り上げるのはどうかと思います。言い換えれば、「今まで得をしていた層」だから、変化すると損するのかもしれません。それを一概に不公平だといえるでしょうか。今までゼロ円だった方々はまさにそうです。
本来専業主婦(夫)の人たちも国民年金保険料を納めるべきですが、歴史的な経緯をふまえ、現状では無料になっています。こうした人たちには負担増は不公平に思えます。しかし、正社員として働く女性、シングルの男女にとってみれば、専業主婦(夫)の保険料が無料である分を、彼らの厚生年金保険料の一部でまかなっていますので、不公平感が強くあります。むしろ、彼らにとっては消費税のほうが公平感がある、ともいえるわけです。
年金生活者についても、視点を変えてみるとこういう言い方ができます。確かに今まではゼロ円だったかもしれません。しかし、今年金生活に入っている方は、戦後すぐの厚生年金保険料率はわずか3%でしかありませんでした。今現役世代の人たちは現在で約15%、最終的には18.3%の保険料率で納めなければなりません。年金生活者の現役時代の負担が低かった分、今現役で働く人の負担は5倍以上です。消費税がかかることを一概に不公平だと言えるでしょうか。
消費税のよいところは、消費する金額が少なければその分税金も少なくてすむということです。つまり、生活費が低くて暮らしている人ほど負担は少なくてすみ、高い生活費で暮らしているお金持ちほど多く税金を納めることになります。
新卒の人たちは手取りが15~18万円くらいで暮らしていると思いますが、消費税6%とすれば毎月9000~10800円ほど納めることになります。これが高所得者であって毎月60万円使っている家庭であれば、36000円も納めることになります。子どものおこづかいにもかかることになってしまいますが、仮に月額10000円で毎月600円程度です。これはこれで、公平、という感じもしませんか?
生活必需品については税率を下げるということも検討されています。日常生活への配慮がないわけではありません。むしろ保険料を一律に引くほうが、現役世代の生活に配慮がないともいえませんか?(個人的には食料品等の税率は下げず、医療費や教育費について軽減税率ないし非課税を採用するほうがよいかと思います)。
また、今まで未納であった人に年金が満額払われることについて「不公平」だという人が多いようですが、これもそう短絡的に捉えないほうがいいと思います。なぜなら、未納であった人が年金をもらえないからと生活費との差分を生活保護に依存するようになれば、結局税金の負担が増え、その分を国民全体で負担せざるを得ないからです。当然、低所得者は無収入の人は消費税以外の税金をほとんど納めていないことになります。
それよりは未納する人がいなくなり、税金の体系で保険料もまとめて徴収することができるほうが効率的ではないかと思います。会社員は逃げられませんが、自営業者等は任意で払わないことができるというのは仕組み上おかしいですし、少なくとも任意で逃げることをできない仕組みにするほうが公平です。
ここまで見てみて分かると思いますが、消費税に切り替えることはそう簡単な話ではないし、制度が変化する以上は、経過的に損をする人や得をする人が現れます。だからといって切り替えることがおかしいというのでは、変化してはいけないことになってしまいます。変化しない制度で維持できないから、変化について議論をしているわけですし、いろいろ考えてみて欲しいと思います。
もちろん、このコラムだけで話し尽くせる議論ではありません。しかし、「とにかく払いたくないから反対」とか、「変化して一人でも不利益がでれば反対」、といった単純化する議論にはできれば乗らず、じっくり判断をしていただければと思います。
皆さんはいかがでしょうか? 少し考えてみていただければと思います。