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今年の温泉ベスト10 <2007年 対談後編>(7ページ目)

今年の温泉ベスト10!日本を代表する温泉研究家、郡司勇(温泉レポート)と、藤田聡(日本の名湯)両ガイドによる、年末恒例の特別対談!互いの温泉観も含め、今年も奥深い対談となりました。温泉好き必見です!

執筆者:郡司 勇

温泉ベスト10 郡司分一位 法師温泉 長寿館 (再訪) 100

法師1
大きな混浴浴槽
<郡司> 法師温泉には3回目の訪問であるが、以前はいずれもかなり昔の話で、記憶が薄くなってしまっている。木造の2階建ての本館の記憶が強く残っている。明治8年築の古さである。明治28年築の法師の湯浴室と昭和15年築の別館と共に、国指定文化財に指定されている。外観は鄙びており、黒い柱や梁が白い壁に映える。そして屋根は桧皮葺きである。玄関脇に郵便ポストがあるのもアクセントになっている。法師の湯浴室の屋根も、方形造りのむくり屋根で桧皮葺きである。

泊まりで訪問したので、本館の部屋を希望した。2階の17番部屋で女性用の長寿の湯小屋と渓流が眺められる最良の部屋である。天井には古い建築特有の梁が露出しており、豪快でたいへん気に入った。次回も本館に泊まりたい。ほかには川を渡る別館と、薫山荘があり、渡り廊下で道路を越えると法隆殿がある。別館の昭和15年を除き新築で立派な造りであるが、奇麗過ぎて風格は本館に負ける。玄関を入ると磨き抜かれた板敷きのロビーで、吹き抜けの大きな空間である。神棚や大きな柱時計、木の根っこを使った囲炉裏などが風雅な趣を出している。脇には囲炉裏部屋もある。

法師の湯は4つの大きな桝があり、中央に柱を掛け渡しており、8つに仕切られたように見える。壁にアーチ窓の付いた縦長の窓が1面に3ヶ所づつ付き、レトロな洋風風情が出ている。湯は足元湧出源泉で、底の砂利の間より湧出している。手前の2つの浴槽には上から湯を注いでいるが、これは脱衣場下より湧出した湯をこちらに流しているとのこと。足元から自噴している源泉の、湯量の多い部分は多量に気泡が湧出し、溢れるような湯の流れが分かるので、その真上に行くと素晴らしい入浴感である。湧出する湯の流れを感じ、さらに気泡が身体を伝わって無数に立ち昇る。適温で長湯出来、ここでしばらく入っていると、夢想の境地になるのが分かった。
法師2
足元の玉石より湧出している


この法師の湯だけで充分に満足である。女性用の長寿の湯も足元湧出で湯量も多いと聞くが、当然入浴できなかった。玉城の湯はオーバーフロー循環である。湯は42.7度の芒硝石膏泉(CaNa-SO4)で総計1250mgと清澄な湯である。ここの宿は食事も適度においしく、宿の風情は完璧で、温泉も満足である。温泉宿としてマイナス要素がなく、100点満点の温泉と評価したい。

<藤田> 法師温泉長寿館は、湯も風情も完璧で、本当に「殿堂入り」という感じですよね。法師の湯が素晴らしいのはもちろんですが、玉城の湯も、露天はいかにも循環という感じで入る気がしませんが、内湯は法師の湯が新築の時は、こんな感じであったかと思わせてくれる風情が好きです。温泉好きとしては、女性専用の長寿の湯も気になりますね。法師の湯が女性専用の時間帯は、長寿の湯を男性専用にして欲しいものです。

芒硝石膏泉は意外と良くあたたまるので、お湯が温いのに、暖かい時期はのぼせてしまいます。むしろ、これからの寒い時期が一番のお勧めと思います。

おわりに


<藤田> 本日は長時間、本当にありがとうございました。最近、二人揃
って「温泉文化を守る会」の発起人になったこともあり、来年も温泉文化なども含めて、幅広く対談させて頂ければと思いますが、いかがでしょうか?

<郡司>  今年も表現は違うものの、ほぼ同じようなことを言っていましたね。楽しい会話となりました。また来年やりましょう。
昨年の分はこちらです。今年の温泉ベスト10 <2006年 対談後編>

<藤田> ありがとうございます。今回も郡司さんの卓越した観察眼に驚き、感激しております。本日はどうもありがとうございました。
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