14 鶴巻温泉 弘法の里湯(温泉地再訪) 完全循環
ここも完全循環の温泉である。源泉はカルシウムナトリウム食塩泉で総計6104mgの良いものであるが、完全循環のカルキ臭強しである。源泉は素晴らしいものと推測され、塩の濃さよりもカルシウムのエグ味、苦味が勝っている。伊豆山などよりも塩が少なくカルシウムが多い分、個性的な源泉であり、このエグ味は特異である。しかしこのような形でしか使えない施設の見識にがっかりするし、ほとんどが施設代であろうが、1000円をどぶに捨てたような気持ちになったのは珍しい。光熱費をケチらずに加熱掛け流しの小さい浴槽を造るべきだ。というのも源泉のよさと浴槽のギャップが激しいほど、良い湯の存在が残念であり、以上のように思うわけである。松田忠徳氏やその他の方が各所の本で嘆き、厳しく書くのもこのような施設を指しているのであろう。良い源泉だけに、温泉に入って不満足感がふつふつと涌いてくる施設と言うのも逆の意味で存在感がある。改修を期待したい意味で厳しく書かせていただいた。
15 厚木風水天然温泉 ほの香
ヌルいながら源泉直接の掛け流し浴槽があるのは感動。
厚木の郊外にできた厚木天然温泉「ほの香」はわずか27.5度の源泉で、総計も213mgと薄いものであるが1階の内湯に源泉掛け流し浴槽を造り立派なものである。露天風呂には源泉浴槽が2箇所あるが循環である。その他の浴槽はみな井戸水である。温泉とは無理に加熱したり循環するよりも源泉のままがうれしい。山梨の増富ラジウム温泉なども20度台で湧出しているが、源泉浴槽がありヌルいながらメインの浴槽となっている。このほの香は源泉が清澄なものであるので源泉掛け流しでも透明、無味、無臭であるが、これを造った潔さがよいのである。この掛け流し浴槽がなければ、全国に数多くある循環加熱の温泉センターと違いが無くなってしまう。ほかに麦飯石サウナや風水による金運風呂、長寿風呂、開運風呂などがあって面白い。しかし温泉なのだからやはり温泉が主役になければいけないと思う。ここは桧風呂に源泉浴槽を使いメインとしている。
16 本来の良い温泉とは
日本の温泉の将来はさらに情報開示の方向へ進むであろうし、客も厳しい目になってきている。現在では一部のガイドブックにも掛け流しマークが付き始めているし、旅行会社のパンフレットも不当表示にならないように宿は源泉、循環、加水などが分かるようになった。私はある本のように、やたらにレジオネラ菌の危険をあおりたくはないが、単なる温泉好きとして、温泉に行くために費用と時間を掛けて行くので、やはり源泉直接の浴槽に入りたいし、それが普通のことだと思っている。今までがやや使い方が悪かったかなあと、温泉施設側から反省され、時間と共に改善されてゆくと思う。今後掛け流しに改修するので、私に設計してほしいという依頼がすでに3軒の温泉施設から入っている。また先週鳥取県を廻ったが循環は大きな温泉センター1箇所以外になく。安心した。また最近、静岡県の温泉協会(ほとんど伊豆の温泉地)の総会で講演をしたが、みなさん熱心に聞かれていた。県の保険課の見解だと静岡県はまだ循環が多いほうで50%前後であると言っていたが、わたしはそんなに多いのかと思った。というのも伊豆をまわると私の選び方にもよるだろうが、どこも掛け流しでよい湯ばかりなのである。また大分県は10%以下だそうだ。ある本で循環が世の中を制しているような論調もあるが実はそんな大きな数字ではないのである。しかしオーバーフローがない完全な循環はいけない。5700ヶ所近くの数多く温泉に入り研究した結果。温泉の重要な点は新鮮度であることがわかった。極端な例で申し訳ないが、客としては循環浴槽は残った生ビールや日本酒の燗冷ましを飲まされているのと同じ状況だということを認識しないといけないし、宿の方もそんなに失礼なことをお客に提供しているということを理解してほしい。温泉の使い方を重視して、少ない源泉ながら掛け流しにしている温泉が良い湯である。みなこのような温泉になって素晴らしい温泉天国の日本になってほしいと願う。
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