塩原行き
フジテレビより取材の申し込みが入り、いつもテレビロケは急なことが多く時間の都合がつかないため、断ることが多かったのであるが、今回は万障繰り合わせていただき休日に予定を合わせ塩原に行った。ホームページや諸所の雑誌で原稿を書いている私が取材しているところを、テレビでその上から取材しドキュメントにするということである。12月1日の深夜放映のEZTVとのことである。
1塩原元湯温泉(温泉地4回目)ゑびす屋
塩原元湯は硫黄と重曹を多く含む食塩泉で新湯の酸性の単純硫黄泉とともに塩原温泉街の中心から離れ山の温泉地という形になっている。食塩泉の古町、塩釜、福渡などと違った白濁した硫黄泉が湧出し塩原温泉郷を含蓄深いものとしている。元湯温泉は、古くは元湯千軒と言ったそうであるが現在は3軒である。鉄分が硫化して墨のような濃厚な温泉になっている大出館と硫黄の濃い元泉館は以前入浴していたが、ゑびす屋は今回初めてであった。有名な間欠泉の「弘法の湯」と炭酸の感触のあるヌル湯の「梶原の湯」の2源泉が浴室に自噴湧出している。「名湯は下に下れ」との通り半地下のような浴室に入ると、弱く白濁した「梶原の湯」と小山のような析出物が壮観な「弘法の湯」が並んで2つある。同じ浴室で2つの源泉が体験できるのは贅沢なものである。梶原の湯は古くから発見され塩原最古の湯と表示されている。木の浴舎で木の浴槽で温泉の雰囲気も上々である。38.3度の梶原の湯は温度が低い分CO2(遊離炭酸)が669mg含有され炭酸味がはっきりとわかる。総硫黄分は24.8mgで温度が低い分、弘法の湯より薄い白濁である。総計3732mgであり硫黄も含有する含硫黄重曹食塩泉である。観察ではこの個性ある成分により複雑な物になっている。「薄白濁(30センチ)、炭酸味+少塩味+硫黄甘味、硫黄臭」というものであった。分析表データはNa 667 Ca 146 Mg 29 Cl 725 SO4 76 HCO3 1157 HS 4.5 H2S 20.3この浴室の圧巻「弘法の湯」は間欠泉で5分おきにどーっと湧出する。湯口の下には狸置物の腹のような析出物が生成されていて素晴らしい。しかし年々成長するので最近少々削ったとのことである。52度の含硫黄重曹食塩泉で総計4449mgで比較的濃厚である。温度が高い分炭酸分は136mgであるが総硫黄はHS 12.6 H2S 28.5と41.1mgとなり立派な硫黄の含有量である。「白濁(20センチ)、硫黄の甘味+少塩重曹えぐ味、硫黄臭多し」であった。
2塩原元湯温泉 元泉館
元湯温泉では一番大きな宿の元泉館は「高雄の湯」と「邯鄲の湯」「宝の湯」の3本の源泉を所有していて硫黄分の濃い硫化水素型の含重曹食塩泉が湧出している。遊離硫化水素が主である温泉は白濁するのが特徴であるが硫化水素イオン(HS)型の緑色を呈する特徴も併せ持ち、緑白濁している温泉である。浴槽横の岩壁に湧出口のある名湯「邯鄲の湯」は古い浴室で53.2度の毎分2.5リットルという貴重な源泉である。高雄の湯よりも塩分が多く硫黄を含んだ塩味が大きな特徴になっている。湧出量が少ないので一部高雄の湯も入れている。邯鄲の湯はこの浴槽1つだけなので混浴となっている。まさに「名湯は混浴が多い」といえる。浴槽の横の岩壁が見えコンクリートの浴槽は温泉好きの琴線に触れるもので雰囲気も好きである。総計4957mgでHS 18.9 H2S 42.8の総硫黄61.7mg炭酸も485mg含有している。「白濁、塩味+硫黄甘味+重曹エグ味、硫黄臭多し」と観察した。高雄の湯は大きな内湯と露天風呂がある綺麗な浴室である。分析表では硫黄の含有が多くHS 13.1 H2S 58.9と総硫黄72mgと国内でも屈指の含有量になっている。恐らくベスト10以内に入っていると思われる。緑白濁、少塩味+重曹えぐ味、少硫黄臭と観察した。硫黄分が濃厚な割に匂いは少なくなっている。温度も51.8度という高温で良い源泉である。同じ湯であるが酸化の差で内湯は薄緑色で露天風呂は濃い緑白濁になっている。
3塩の湯温泉(温泉地再訪) 旧玉屋旅館浴室(個人宅)
塩の湯は明賀屋の露天風呂が良いと思い入浴を乞うが日帰り不可であった。廃業した立派な造りの玉屋旅館の外観を見学しているとご主人がいた。いろいろと話しをしているうちに現在でも使っている温泉に入浴させていただけることになった。(特別に許可)源泉は柏屋とも同じ「刈子の湯」である。総計5121mgの食塩泉である。薄褐色、塩味、土類金気臭という塩の湯本来の源泉が鄙びた浴槽に掛け流しされていた。この塩の湯は鉄分は1.26mgと少量であるが褐色の沈殿析出物が多量にある温泉でタオルは茶色に染まるものである。塩原という名前の本来の温泉と推測される。