長袖を用意して、凍える地底を目指せ!

富岳風穴の氷
富岳風穴の洞内。秋まで氷が溶けずに残っている

富士山といえばニッポンの象徴、一度は登っていきたい山。でも明るい場所のネタは次回に取っておくとして、今回のドライブは逆に富士山の地下を目指す洞窟探検だ。洞窟ってだけで、「深くて狭くて暗いのなんか絶対イヤ!」っていう人もいそうだけどね。
穴ぐらが大嫌いでなければ、とりあえず出かけてみよう。樹海の中にぽっかりと口を開ける暗い縦穴。下っていけば一気に体は冷気に包まれていく。涼しい、を通り越して寒いのも当然、かつては天然氷を貯蔵する場所として利用されていた洞窟もあるのだ。

洞窟って言葉で連想するのは鍾乳洞だけど、富士山周辺はちょっと違う。ここは世界的に知られた溶岩洞窟エリアなのだ。溶岩洞窟というのは、簡単に言えば、火山から流れ出した溶岩流の回りが固まったあと、内部の溶岩が流れ出して空洞を作ったものだ。何万年もかけて、水が石灰岩を溶かしてできる鍾乳洞と違い、その多くは平安時代頃の富士山の噴火によって生まれたもの。また、鍾乳洞のように構造が複雑ではなくて、床が平らで比較的単純な構造を持っているものが多いなどの違いがある。洞内には溶岩鍾乳洞や溶岩棚、ロール状溶岩など、特有の形状が観察できる。
富士山麓には小さなものを入れれば、100以上の溶岩洞窟が存在しているらしい。そのうちのいくつかは観光地化されていて、照明なども完備しているが、それじゃ満足できないと言う人には無人の洞窟もある。ざっと紹介していこう。

レベル1:お散歩気分で冷気を満喫

西湖コウモリ穴
整備されて歩きやすい西湖コウモリ穴。比較的照明も明るめ

まずは完全に観光スポットとして営業している場所。観光バスもやってくる有名どころで、洞内は歩きやすく、服を汚す心配もない。
■西湖コウモリ穴  
山梨県富士河口湖町
長さ:380m(うち公開分約300m)
有料・照明完備
一時閉鎖されていたが、平成10年に観光洞としてオープン。新しいだけに設備も整っていて洞内は明るく歩きやすい。ただ、天井の低い場所があるので入場者には入口でヘルメットを貸してくれる。ここはそれほど温度が低くないため(でも夏は十分涼しい)、名前の通りコウモリの生息地として天然記念物に指定されているけれど、生息域は保護エリアとして立入禁止になっている。朝か夕方に行って運がよければ目撃できるかも。そんなん見たくない、というひともいるでしょうが。
●西湖コウモリ穴
富士河口湖町観光情報サイト内の施設紹介。割引券もある。

■鳴沢氷穴
山梨県鳴沢村
長さ:153m
有料・照明完備
洞内の平均気温はたった3度! 冗談じゃなく上着が必要。その名の通り真夏でも氷が見られるほどで、かつてはここに保存された天然氷が幕府への献上品として江戸まで運ばれたとか。 ここは溶岩洞穴には珍しく縦穴主体になっていて、最深部の氷の池は地下21mもの深さだ。
●鳴沢氷穴オフィシャルサイト
氷穴の歴史や成因などを詳しく解説。富岳風穴と同じ会社が管理していて、富岳風穴の案内もある。こちらも割引券あり。

■富岳風穴
富岳風穴
青木ヶ原樹海の中にぽっかりと口を開けた富岳風穴。階段を降りていくと一気に気温が下がっていく

山梨県鳴沢村
長さ:201m
有料・照明完備
鳴沢氷穴の西、国道139号線沿いに大きな駐車場がある。鳴沢氷穴に比べて洞内は広く足元は平らなので歩きやすい(ただし一部は天井が低い)。こちらでも氷が見られるほか、昭和初期までは穀物の種や蚕の卵の貯蔵に使われていたため、それを再現した展示もある。

以上の3ヶ所は、みな平安初期に噴火した富士山の寄生火山、長尾山の溶岩流が作り上げたもの。ちなみにこの噴火の溶岩流(青木ヶ原溶岩流)が、当時富士山の北にあった「せの湖」という大きな湖を埋めて現在の西湖・精進湖・本栖湖を作り、その上に生えた樹木が青木ヶ原樹海となっている。鳴沢氷穴と富岳風穴の間には、青木ヶ原樹海の中を歩くルートが東海自然歩道の一部として整備されているから、森林浴気分で歩くのもいい。ただし、あとで書くけど下手に樹海の中へ寄り道しないようにね。
●風穴氷穴ホームページ
富岳風穴・鳴沢氷穴の案内サイト。洞窟の見取り図が掲載されている。

■駒門風穴
静岡県御殿場市
長さ:本穴291m、枝穴110m(公開部分約300m)
有料・照明完備
なんと東名駒門PAにクルマを置いて歩いて行けちゃうコンビニ風穴。見学と往復の時間合わせても1時間あまりだから、渋滞の時の時間つぶしにはちょうどいいかも。ここは約1万年前の三島溶岩流が作ったもので、富士五湖周辺の溶岩洞窟に比べてはるかに古いため、世界中でここにしかいない昆虫などの洞窟生物も発見されている。規模は富士山東麓にある溶岩洞穴の中では最も大きく、ほとんど普通に立って歩ける。洞内の気温は1年中13度前後とか。ちなみに「風穴」というのはたいてい「ふうけつ」って読むんですが、ここでは「かざあな」だそうです。