ロンドン/ロンドンの観光・エンターテインメント

職人の腕が光る世界 ロンドンでミクロ工芸美術を堪能

ミクロの技でマクロの美を表現するモザイク。目を凝らして見ると、稠密な色の粒子が創りだす世界が姿を現す。その不思議な世界を堪能できる、スポットをご紹介します。

執筆者:平良 淳



ミクロの技でマクロの美を表現するモザイク。
数百年の時を超えて艶やかな色彩を放ち続けるその絵画に、
顔を近づけ、目を凝らして見ると、
稠密な色の粒子がつくりだす世界がそこに姿を現す…。

前世紀のイギリス人は、モザイク工芸の不思議な世界に魅了され、欧州旅行の記念品としてイタリアからイギリスへ大量に持ち帰りました。今日残るモザイクの名作の多くがイギリスで収蔵されているのもそのためです。今回は、モザイク工芸の世界を堪能できる、とっておきのスポットをご紹介します。

世界中の至宝が集まるギルバート・コレクション

Gilbert Collection
The Gilbert Collection
Somerset House, Strand, London WC2R 1LA
ギルバート・コレクションの詳細については、写真をクリックしてください。
テムズ川のほとりに建つサマセット・ハウス内に、装飾美術品を集めた新しい博物館、ギルバート・コレクションがあります。2000 年にオープンしたこの博物館には銀製品、プロセインのフリードリッヒ大王が愛用した嗅ぎ煙草入れなど、アーサー・ギルバート卿により寄贈された美術品の数々、約 800 点が展示されています。日本人の観光客にはまだまだ認知度の低い博物館ですが、ここには、他ではなかなかお目にかかれない、質の高いモザイク工芸品が収蔵されているので、工芸美術に興味のある方には、ぜひ足を運んで欲しいと思います。

玉の自然な色合いを利用するフィレンツェモザイク (1 階)

Florentine Mosaic
石の自然な色合いと模様が織り成す不思議な世界を上手く利用して、建築物とそれを取り囲む光と影を表現したフィレンツェモザイクの傑作。
フィレンツェモザイクとは、モザイクの 2 つの系統の 1 つで、半輝石を色々な形の平たい板状にカットし大理石のパネルにジグゾーパズルのようにはめ込み、描画する技法です。この技法には絵心はもちろんの事、石を寸分の狂いもなく正確にカットし研磨したりする高度な専門技術も必要とされます。1 階の受け付け横の展示室では、17 世紀から 19 世紀にかけて製作された調度品やパネルの数々を見ることができます。石の自然な色合いや模様を巧みに生かし、まるで絵筆を使って描いたかのような錯覚を起こさせる見事な作品が集められています。

プラズマテレビのプロトタイプ? - ローマモザイク (2 階)

Roman Micromosaic
これがモザイクなのですよ!ルネッサンス絵画の巨匠、ティッツィアーノの肖像画のコピーを、ローマモザイクの技法を使って 19 世紀に製作。
ローマモザイクとは、モザイクのもう 1 つの系統で、多彩な色ガラスの細い棒を用いて描画する技法です。ガラスや半輝石の土台にくぼみをつくり、そこに細いガラス棒を緻密に差し込み、表面を研磨すると絵が浮かび上がります。プラズマテレビのプロトタイプをつくるようなもので、絵心と精密性、そして何よりも根気が必要な技術です。細かいものになると約 2.5 cm 四方面積に 2000 本もの細棒が埋め込まれているといわれます。2 階の展示室には拡大鏡を使わないと一つ一つの細棒が判別できないほど緻密なミクロ工芸美術の世界を見ることができます。そうそう、入場の際に、無料でレンタルできる拡大鏡を借りるのをお忘れなく!

モザイクというと床や壁の装飾というイメージが強かった私には、これらの作品との出会いはショックでした。アンティークの本場、ロンドンでならではの出会いだったと思っています。みなさんにも、ぜひ覗いてみていただきたいと思います。

■ギルバート・コレクションでの特別展

アンティーク・ジュエリーに興味のある方にグッド・ニュース!この夏、ギルバート・コレクションでは、コレクター垂涎のお宝が一挙に展示されます。詳細は以下のとおりです。

Masterpieces of American Jewellery
6 月 12 日まで
19 世紀から 20 世紀末までにデザインされたジュエリー 200 点を展示。ティファニー、ハリー・ウィンストンなどのアメリカの宝飾店の他に、アメリカとゆかりの深かったカルチェやブルガリ、JAR などのヨーロッパのブランドの宝飾品を自然、ユーモア、レジャーなどのテーマに分けて展示。

Catellani and Italian Archaeological Jewellery
9 月 18 日まで
19 世紀のイタリアでマスター・ジュエラーと呼ばれた、カステラーニの作品と彼の作品に多大な影響を与えたといわれる古代ローマのジュエリーを展示。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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