『もう十年もいる』って答えると、『小学校卒業してから働いてるのか?』って(笑)。とにかく日本人は若く見えるらしいね。僕も最初はコンタクトレンズでメガネなんてかけてなかったんだけど、落ち着いてインテリジェントに見えるようにメガネに替えたんだよ」
まわりの同僚や上司もアメリカ人ばかりであるだけに、社内のつきあい方にも違いがある。
日本では家族ぐるみのおつき合いが当たり前みたいなところがあるけれど、アメリカでは会社とプライベートは、きっぱり割り切っている人が多い。
「アメリカ人って社内で仲良くしていても、どこまで心を許しているのかって考えたことない? ゴルフやパーティーを共に楽しむけど、彼は会社でのポイント稼ぎに仲良くしているのかな? どこまでの信頼関係にあるんだろうって皆目検討がつかない。長くアメリカにいる日本人の友人に聞いたら『家族や恋人を紹介してくれたら、心を許し信頼されている証拠だよ』って言われたけどね」
いまでは現地にすっかりとけ込んでいるマイコーに、日米のビジネス意識の違いについて尋ねてみた。
「アメリカ人って目先の営業成績をとっても気にするから、日本人のように長期的視野で製品を開発していこうって余裕がない。今月の売上こそが大事なんだ。そこら辺の考え方が違うから仲介するのは大変だね」
目先の売り上げが第一とはシビアだが、
「僕もアメリカに来たらもっと自由にできると思ったんだけどね。アメリカ人ってボスに絶対服従だよ」
と、意外なコメント。
アメリカ人の上司と部下なら互いにいいたいことを本音でいいあうんだろうなと想像していたのだが。
「それはほとんど見たことないね。でないと、ボスにクビ切られるから。給与だって下げられるしね。僕の場合は駐在員だから、絶対クビ切られることはないんだけど」
イメージとは違ってアメリカのほうが縦社会であるようだ。
だから、ある意味でゴマすりも日本より激しいらしい。
「日本だったら、関連部署の人が別の部署の社員に『こういったことが必要だからやってもらえないかな?』って言われて、その人が会社の利益につながる必要なことなんだと思ったらやるでしょ? だけどアメリカ人は絶対やらない。アメリカだとボスを通してからしかやらない。ボスに自分がやったことを評価されなきゃ意味ないわけだからね」
その違いは日本とアメリカの管理体制の差にも如実に表れている。
「アメリカではトップがしっかりしてれば、下がどうであれ良くなる。アップルコンピューターだってCEOがスティーブ・ジョブズになって良くなったし、コンチネンタルエアーラインだって昔は最悪なエアーラインだったのに、CEOが代わってナンバー1になった。反対に日本では上が、のらりくらりしていても末端の方はイニシアティブが高いから何とかなる」
この発言には、うなずける人も多いだろう。
日米ではピラミッドの強度が逆さまになっているといえそうだ。
「現時点ではアメリカの平均教育レベルは一部のエリートを除いて日本に劣っている。アメリカはガバメントとかがしっかりしてる一方で、末端の方ヘ行くほどいい加減になってくる。日本と逆だよね」
最近は日本の末端も『ゆとり教育』とかでレベルが下がってきていると、よく耳にする。
日本のピラミッド構造がバランスを崩して、末端がつぶれたら、すべてがぺしゃんこになるという事態にならないよう願いたいものだ。
アメリカビジネスに参入するなら、第一の条件である英語は不可欠。ただしマイコーのように、短期間の英会話研修を受けただけでも失敗を恐れずビジネスの世界へ身を投じれば、英語でビジネスすることに次第に慣れるようだ。
私からみて、マイコーは日本人であるという自覚や自尊心を失わないタイプ。社内ではアメリカのやり方に全て屈することなく、意見や改善すべき点は、しっかり主張しているようだ。客先でも日本のビジネスマンのようにへりくだるばかりではなく、『もう十年もいる』と彼が答えたようにキャリアを表に出したほうが上手くいくケースもあるということが学べる。
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