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瀬戸内の「隠れ島」からの招待状(3ページ目)

リムジンクルーザーで行く隠れ島。至福の隠れ家に泊まれるのは一日4組。暗喩として神話の世界が隠された「海の道」の謎解きの旅へ。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

「海の道」をめぐる謎解きの旅へ。

クルーザーで瀬戸内の島々へ
貸切りクルーザーは、豊島(愛媛県)を後に、瀬戸内海を一路真鍋島(岡山県)へと向かった。
翌朝、遅い朝食をいただき、島を散歩した後の11時。チェックアウト後に、クルーザー「さつき」はお客様を「尾道」か「鞆」に届けてくれる。楽しかった「かくれんぼ」も終わり。また、港町へ戻ろう。
ところが、ここで私は、もう一艘のクルーザー「メイ」に乗り込んだ。ヴィラを経営する風の音舎が進める「海の道再生」、つまり、古代からこれまで交通路として栄えた瀬戸内の海の道を現代流に蘇らせようという試みに乗った。海の道をクルーザーでゆくと、瀬戸内の島々をまるで車で訪れるかのように訪ねることができるのだ。
古代の神々は、大陸から朝鮮半島を経て九州にやってきた。アマテラスがスサノオとの誓約(ウケヒ)で生んだとされる宗像三女神は、玄界灘の守護神として宗像大社に祀られるが、市寸比売(イチキヒメ)は厳島(イツクシマ)神社にも祀られる。市寸比売は「弁財天」と名を変え、瀬戸内から大和(天河大弁財天社など)、伊勢志摩へと勧請社を増やし、海や水の守護神となっていった。そのルートこそ、神々が大和へと向かった「海の道」ではなかったのか。
元来、朝鮮半島に多い、スサノオ(牛頭天王)が残した「蘇民将来」伝説も、瀬戸内を通り姫路を経て、京都の祇園社(八坂神社)に勧請された。あるいは、森の国日本において、瀬戸内では石切が盛んであるが、石の文化こそ、大陸の文化ではないか。その技術はどうやって伝播してきたのか。「海の道」は様々な宗教や文化の交差点に当たっており、日本文化の謎解きのいろいろな鍵が瀬戸内の島にあると思っている。そんな海の道をクルーザーだとあっという間に訪ね歩くことができる。
「メイ」がやってきたのは、真鍋島。海の道の謎解きもさることながら、船乗りに有名な漁師料理の店があるという。その名は「漁火(りょうか)」。漁師向けに日中しかやっていないので、昼の居酒屋とも言える。どんな料理かは、上記「真鍋島」さんのサイトに乗っている。豪快!そのもの。
おばあちゃんの家
戦前の文化財・生活財がそのまま残る「おばあちゃんの家」。島の路地陰にあり、島唯一の雑貨店で鍵を借りる。
そして、この鄙びた風情の島(夏目雅子の「瀬戸内少年野球団」ロケ地の学校もそのまま残っている)には、もう一軒、貸切り専用の「ヴィラ(?)」があるという。それが「おばあちゃんの家」。一般には貸し出していないが、どうしてもという方には、寝具を弓削島から運び、宿泊することができる古民家である。
といっても、この家は、五右衛門風呂やかまどがそのまま残る文化財級古民家である。ヴィラ風の音とのギャップを楽しみたい外国人などはとても喜ぶことだろう。
今日たどった、豊島から真鍋島で漁師料理をいただき、鞆か尾道へ帰港するオプションは、風の音クルーズで商品化されている。6名以上集まれば、一人15,800円。グループにおすすめである。
もちろん、クルーザーのチャーターも可能。3時間で168,000円(6時間なら倍額)。二人きりのオリジナル「海の道」クルーズも夢ではない。
海に囲まれた国に住みながら、日本人は今までこうした旅のスタイルを見出せてこなかった。ところが、風の音舎が、「海の道」の再生というコンセプトを通じて、日本人にクルーズでの海の旅を提案し始めた。



ヴィラ風の音
風の音クルーズ
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