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名建築家の宿「べにや無何有」(2ページ目)

建築家竹山聖が加賀・薬師山の気を取り入れ設計した「方林円庭」とは。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

「無何有」の真骨頂、「方林円庭」

円庭
水が宇宙から流れ、人の心を潤す。

「方林円庭」。
そう名付けられたフロアには、こんこんと水の湧き出す円泉の庭。その周囲には、原 研哉作の「蹲(つくばい)・方寸」というオブジェがある。水滴が浅い円錐の器に落ち、水玉となって細い道をたどり、最後には一寸四方の小さな穴「方寸」に消えていく。
宇宙の摂理を水玉の動きに表象させたもので、「方寸」とは禅の言葉で「人の心」を指す。生命の源でもある水が、人の心にと流れつき、身も心も癒してくれる場。それが「円庭」なのである。
「円庭」の奥の個室では、白山や東洋の生薬を蒸しあげた薬草玉や、薬草オイルを使った「薬師山トリートメント」を二人同時に体験できる。60分から100分間、ひとりひとりの体調に合ったボディ、あるいはフェイシャルトリートメントで、心身のバランスを調えたい。

方林
「林」という字は「集まる」という状態を意味する。方林は人が集い、新しい出来事と出会う場所。
「円庭」の隣には、空なる空間に柱が林立する「方林」の間。
あえて人工的な空調や光源を排し、窓から流れ込む薬師山の気と、ほのかな蝋燭の灯りのなか、心を解放し、休ませる。柱の間には、座布が用意されているので、座禅を組み、無の境地に挑戦することもできる。
「大地の『方』と、天の『円』。水の力をたたえ、人が集い、心と身体が、大地と天空が喜びを交換する。」設計した竹山聖は、無何有の象徴的なこのスペースをそう表した。
べにや無何有の客間は、和室8室、洋室2室、和洋室6室、特別室1室の計17室。すべての部屋に、露天風呂が付いている。そのほか、開湯から1300年、とうとうと湧く山代の湯が注がれる男女別の大浴場。そして、カフェとライブラリーが設けられている。

つみれ鍋
つみれ鍋。無何有は、部屋の畳や竹、食材と地元産の天然素材を多く使っている。
料理の献立は、加賀や能登など、地元の旬の素材を調理した懐石料理。とりわけ、最後に供される「つみれ鍋」は、焼き葱の香りが食欲をそそる名物の逸品だ。
「べにや無何有」には、余白のような時間を求めに来て欲しい。そんな願いが、設計者からも伝わってきそうな宿である。
山代温泉の薬師山では、いよいよ山桜咲き、新緑が芽生え、一年で一番美しい季節を迎える。

07年4月13日夜、方林円庭のテラスを舞台として、人間国宝梅若六郎が猩々を舞う「夜桜とお能」の会が催される(お問合せはべにや無何有まで)。


べにや無何有
石川県加賀市山代温泉55-1-3
0761(77)1340
http://www.mukayu.com/
二名一室の時、ひとり31,650円~45,300円
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