■ゲタ
旅館の提供額と、旅行業の販売額との差。
ゲタをはく、ゲタばき、等のように使う。顔をしかめ、吐き捨てるような口調で発音する。
旅行業は、企画商品を作る際、大量販売の見返りに一定の格安額で仕入れ、その額に「適切な旅行業収入」を足して販売価格を設定する。そうした差額も含め、旅館が出した額と販売される価格の差を旅館ではゲタと呼び、感情的に毛嫌いしている。
旅行業サイドでは、旅館がなぜそんなに嫌うのかわからない(温泉饅頭だって同じように仕入れ販売しているではないか)。
しかし、旅行業は、仕入料金(旅館が出した料金)からも十数%の手数料(アールと呼ぶ)を取るので、1万円で売られている商品は、実は旅館の手取りは7千円くらいであることが多く、他業界に比べマージン率が高いと苦々しく思っているのである。
いずれにしろ、人口や総消費が増えないと、商売上、旅行業と旅館は対立する宿命にある。業界内でよく話し合いましょう。
■ジューショク
従業員食堂のこと。調理場の脇の小さなスペースでもこう呼ぶことが多い。
旅館で客に出される豪勢な料理と違い、質素な粗食だが、健康を損ねない質・量のものが提供される。客と同じものを食べていたら、栄養過多で死んでしまう。
かつて、ガイドも、これまで出会ったなかで最高に美味いカレーライスを北陸の旅館のジューショクで食べたし、長野では、ふき味噌のせ七分付き飯という、病み付きになるくらい美味い飯を食べたのもジューショクであった。
■パントリー
各フロアにある配膳準備室のこと。
仲居さんにとって、ジューショクは一日一回休憩しに行く“公的な場所”という感覚であるが、パントリーは、職務テリトリーの中で息が抜ける唯一の場所。業務用エレベーターやダムウェータ(小型昇降機)で、ワゴンや脇取り(食器を入れたお盆状の容器)が上がってくると配膳の仕事が始まるが、それまでひと息つけるのもこの場所である。忙しい毎日。ジューショクまで行けず、ここでそっと弁当やパンを食べて、食事とすることもある。
狭い職場なので、パントリーの人間関係に気を配るのが支配人の仕事となる。
この後は、符牒編。
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