大晦日、有馬「御所坊」は三味の音に芸妓の餅つきで年を越す。
サロン、Bar、餐房、茶房。御所坊はパブリックも充実している。 |
有馬温泉「陶泉御所坊」の金井啓修さんもその一人。
「伝統とは革新の連続」、「新旧、ファストとスロー、機能と情緒、西洋と東洋。相反するものを同時に許容するのが成熟化社会」という理念のもと、昭和初期の古い木造旅館を、現代人の感性にフィットする宿に(ついでに街までもを)改良し続けています。
御所坊には、モダニズムであるとか、機知であるとか、一言ではとても言い表せない「成熟化社会に生きる現代人にとっての心地よさ」が充満しています。
しかしまあ、人により、とりわけ「旅館とはこうあるべし、という固定観念をもった古典的な頑固主義者」には、「到底受け入れられないおふざけ」としか映らないかもしれませんが。
あるいは、「金はモノと交換して初めて価値がある」と考える人なんかにもゼッタイ向かないだろうなあ。
ガルガルいいながら駐車場まで迎えに来るロンドンタクシーもさることながら、御所坊に泊まった方が驚くのが、かのバービーちゃんも入浴した大浴場「金郷泉」。
おいおい、男女の仕切りが「竹棒」一本?。これも金井氏をして、革新的確信犯と言わしめた名設計。
ひやひや、泥色の金泉に浸かれば、ありまー、不思議。手が届きそうで届かない「間」をもたせたお風呂だこと。元々温泉は混浴が基本でした。そこまではいかないけれど奥に行けば顔だけみえる似非混浴気分。気になる方は壁の高いほうで入浴可能です。ただ、写真で見れば、昔気質のお父上が「烈火のごとく怒った」というのもわからないでもありません(笑)。
洒落を言っている暇などあれば、本題を書けと言われそうですが、そうです、ついに、あの、金井さん秘蔵の、誰も知らない(はずの)、深閑なる有馬の杜に密やかに佇む、あの「茶室」の門戸が開かれることになったのです!
それは、アヴャンギャルドな「花小宿」にもない戦略性を持ち、かくれんぼに最適な「アブリーゴ」より隠れやすく、「猪の足湯」のような物語も秘め、「有馬玩具博物館」に飾られたサンダーバードより手が込んだ仕掛けの、茶室「偲豊庵」。
さて、それは、如何なる茶室か・・・!(次ページへ)