そうなんです「武士は食わねど」ではありませんが、需給格差からするともっと料金差があってよいはずなのに「差があると不信に思われるから」あまり差をつけない旅館も多いと聞きます。そんなバカな!(もちろん平日も年金受給者の方で埋まるような旅館は曜日による料金差はあまりありませんが、そういう旅館はそんなに多くありません)。
結果として、旅館も利用者も最もメリットのない「(利用者にとって)高くて内容が悪くて(旅館にとって)ちっとも儲からない」週末利用の最低内容価格、の希望が一番多いという結果になっていないでしょうか。実はこれは、不透明な1泊2食制の制度疲労の結果なのです。旅館側しかわからないご都合主義の料金制度の結果、旅館は自ら首を絞め始めているのです。経済成長期、旅館前に行列ができた時代はこれでもよかったのかもしれません。しかし、時代は変わりました(が料金制度は変わっていません)。
では、あなたならどのような料金システムにすればよいと思いますか?
次の第3講座(「旅館が変わる」)までの宿題としましょう。
【2時限目】心付け
渡すべきか、渡さるべきか。悩み多き「心付け」。
結論からすると「渡す必要はありません」。あなたが渡そうとしているのはおそらく、戦前までは「茶代」と言った「わいろ」のことでしょう。
戦後「チップ」という言葉が輸入されました。海外旅行でも最後にチップを渡します。しかし、日本ではチップ制が馴染まないということで、利用者一律に課せられる「サービス料」が生まれました。旅館では「奉仕料」とも言いますが、それが仲居さんの人件費原資となる「奉仕料制」という日給制度も一部地域で残存しています。
サービス料は払っています。それでも、あなたは「心付け」を「到着時」に渡そうと考えていませんか。もちろん、「人前で粋な見栄を張っておきたい」旦那さんなら自然と渡すかもしれません。しかし、「見栄」以上の意味は為しません。
なぜなら、茶代の頃は「それを渡せば、その人が特別な計らいをしてくれた」からです。しかし今では、客室は事前にアサインされ、サービスはマニュアル通り。不公平感をなくすため、特別な計らいはご法度です。そのため、茶代を渡しても、何かが変わることを一切期待しないでください。過去のアンケートをご覧になってもおわかりの通り、60%の方がこうした心付けは払っていません。(残りは、1,000円~3,000円くらい払うという方)
もし渡すなら「特別な計らいをしてくれた時」です。あくまでも「サービスの前」に渡すのは「わいろ」。期待をしてはいけません。しかし、思いがけず有難いサービスを受けた時、その「サービスの後」に、自然に「渡したい」という気持ちが芽生えて渡すのが本当の「心付け」。チップ代わりのサービス料は支払っていますけどね。サービス料が事実上宿泊料の一部(全額旅館の売上)と化してしまっている現在、感謝の気持ちとしての「心付け」は、人間の自然な生業かもしれません。
もし渡すなら、気持ちいいサービスの「後」にしましょう。
旅館はサル山ではありません。決して「前」には渡さないでいただければと思います。