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蒼き狼と熟成マトンの極上ジンギスカン

昭和30年代のジンギスカン鍋、復活! 黒光りするレトロな鍋『蒼き狼』。日本が元気だった昭和30年代に、北海道で流行った鍋。熟成マトンのジンギスカンが似合います。

執筆者:萩原 章史

マトンのジンギスカン
良い道具は存在そのものが絵になります

道具はしばしばその時代を象徴します。料理は年月とともに変化しますが、道具もまさにその時々の文化や技術を色濃く反映することが多々あります。
ある特定の道具を見ると、ある時代の記憶が甦る。誰でも経験があると思います。

私にとっては七輪。昭和40年代初め、時々、親父が買って帰る、漬けタレに浸ったホルモンを七輪で焼いて食べるのが、とても楽しかった記憶があります。
まだ、日本がとても元気で若々しく、貧しかったけど、希望に溢れていた時代です。
台所には土間があり、もくもくと煙を発するホルモン焼き、親父が旨そうに飲むビール、子供の歯では噛み切れないホルモン、『ホルモンはな。噛み切るのではなく、飲み込むもんだ!』とよく親父に言われたものです。

復刻の昭和30年代の道具。その名は『蒼き狼』。

ジンギスカン鍋
旭川の文字が蒼き狼の証
復刻版のジンギスカン鍋です。
それも、「キャストロン」(ダクタイル鋳鉄製スピーカー)を作っている、臼井鋳鉄工業が、昭和30年代に北海道で広く使われたジンギスカン鍋を、ダクタイル鋳鉄を使い、耐熱性・耐久性を高めて復活させたものです。名づけて蒼い狼です。

荒野、開拓。こんな言葉は男の心の琴線に触れます。同じ鋳鉄のダッチオーブンが西部の開拓をイメージさせるのと同じで、この鋳物の復刻版のジンギスカン鍋には、北海道の開拓時代を想像させるのか? 何故か惹かれます。

伝統の熟成マトンの半頭巻きジンギスカン

ジンギスカン鍋
肉は煮るのではなく、焼くのが鉄則
こんな歴史を物語る道具 『青き狼』 には、やはり当時の食材が似合います。
最近流行りの 『柔らかなラム』 のジンギスカンではなく、『伝統の熟成マトンの半頭巻きジンギスカン』で真っ向から道具に挑みたいです。

「マトンが臭くて美味しくない!」とは、何を基準に言い出したのでしょうか?
確かにベイビーラムやミルクラムは、ほとんど匂いも癖もないです。そして、とても柔らかです。
だからと言って、それが絶対の美味の基準なのでしょうか?
実際、羊食文化の本場、モンゴルやイスラム圏では、羊はマトンが基本でラムは離乳食などが主です。モンゴル人は「ラムは味が弱くて、うまいのはマトン」と断言します。

ジンギスカン鍋
黒い袋に何故か哀愁を感じます
確かに上質のマトンは十分に美味しいのです。今回のジンギスカンは骨から外したマトンの半身の肉(ロース、バラ、モモなど)を、丸ごとロールにしてスライスした肉を使っています。もちろん、肉を十分に熟成させています。この熟成が重要です。

ラムのジンギスカンとも食べ比べましたが、これぞ正統派のジンギスカンであると私は断言します。道具にこだわれば、やはり、素材にもこだわり、完璧に時代を再現したいものです。

次ページで、昭和の味、マトンのジンギスカンを堪能します>>
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