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蒸し暑い季節に嗅ぐうなぎの匂いには、麻薬的物質が混じっているのでは? そうでなければ、日本人のDNAには 『ばて』 を感じると、うなぎが欲しくなる回路が刻まれているのでは? と思うことがあります。
ところが、不思議なことにスーパーで山積にされた、カチカチの輸入うなぎを見ても、この回路はONにならないのです。
やはり、食とは五感を総動員して感じ、感動するものです。脂が炭火に落ちた時に立ち上がる煙に含まれるぐっとくる香、うなぎを切る時に箸に伝わるふっくらとした身の感じ、歯にまとわりつく皮のコラーゲン、口中にひろがる脂のうまみ、様々な感覚がコラボレーションを演じることで、うなぎに対する欲求はエスカレートするのだと思います。
今日ご紹介するうなぎは、必ず貴方のうなぎ欲望回路をONにしてくれる逸品です。取寄せ元は創業二年(1862年)創業のあなごや本店で、何と能舞台までお店にある老舗です。所在地はうなぎの産地として有名な静岡です。
素材となる『共水特(マルトク)うなぎ』は関東を中心にわずか30軒ほどの一流店にのみ卸している【幻の鰻】です。
養殖には大井川の伏流水が地下125mの井戸から自噴した清らかな水を使用し、施設から餌かまで、全て最高にこだわったうなぎです。
実は私の実家は大井川から100mほどのところにありまして、この生産地エリアはとても土地感があります。子供のころから養鰻池を見て育った私は、うなぎにはチョッとうるさいですが、今回のあなごやさんのうなぎには大変満足しました。
取寄せしたのは共水特うなぎを使った蒲焼と白焼きですが、もちろん、お値段さえ気にしなければ、利根川などの天然うなぎもメニューにあります。
■13分きっかりの蒸し時間
先ずは白焼きからです。調理歴35年のご店主が絶妙な具合で火をとおしてあり、中は8割程度生の状態です。つまり、食べる時に13分蒸すとちょうど良くなるように加減されています。それ故、蒸しあがりはお店で頂く最高の白焼きと限りなく近い状態になります。
今日はせっかくの幻のうなぎですから、本ワサビをたっぷりと乗せて塩で頂きました。お店の調理案内に 『13分以上蒸すと、串が持たず壊れる』 と書いてあるのですが、まさにそのとおりで、串がうなぎを壊すか否かの絶妙な柔らかさになります。
蒸している間にうなぎから染み出した脂もちょっと時間が経ちますと、逆にうなぎに染み込むようで、とてもジューシーで、かつ、脂は臭みがなく素晴らしいです。変な言い方ですが、うなぎを食べたのに 『あーうなぎ食べた。暫く食べなくても良いや』 という感じにならないのです。やはり、餌からこだわりぬいているだけのことはあります。もちろん、タレがついていますから、蒸した白焼きを使って蒲焼もOKです。
さて次は、蒲焼です>>