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名残の冬の味覚 きちじ(喜知次)と手長エビの饗宴(2ページ目)

石巻港のきちじ(キンキ)と焼津港の手長エビ。実は今の時期は魚貝類が春の産卵前でとっても美味しい季節でもあります。アウトドアでも秀逸の素材です。

執筆者:萩原 章史



■駿河湾の手長エビは上品な甘さが魅力

次の絶品食材は、手長エビです。
手長エビと言っても川エビではありません。駿河湾の底引き網でとれるアカザエビです。このエビは最近ではほとんど獲れません。ましてや活けとなると、高級イタリア料理店でスカンピの名前で出ているくらいです。今回は焼津から活けのエビを車で運びました。1匹250g近くある大物で、こんなに大きいとさすがに食べ応えがあります。

手長エビの食べ方はいろいろとありますが、この順番がお薦めです。
先ずは端麗な味を体験する為にお刺身、次は味を濃縮し香ばしさを楽しむ為に丸ごとの焼物です。イタリア風に腹開きで半分にしたものを塩コショウしてグリルパンで焼き、極上のオリーブオイルをかけて頂くのも美味しいですが、活きたままを鬼殻焼きにすると、生では端麗で上品なエビの味が、『こんなにも濃厚になるのか!』と感動すること間違い無しです。全く調味料を使わなくても素材の力が感動をくれます。

■手長エビの刺身
先ず頭をもぎます。次に尻尾の腹側の両端に出刃包丁で切れ目を入れます。柔らかな側の殻を取り、指で肉をほじりだす感覚で、身を取り出します。



このエビは非常に端麗な甘さが特徴ですから、身にワサビをつけて醤油をチットだけつけるのがポイントです。決して醤油に浸すようなことはしないで下さい。お刺身で残った頭と殻は次の焼物の時に一緒にあぶります。

じっくりと炙れば殻もせんべい感覚で美味しくいただけます。

■鬼殻焼き
何もすることはありません。活けのまま何もつけないでじっくりと焼くだけです。どこにも切れ込みをいれないことで、殻の外側にエビの味が逃げません。更に香ばしくこげた殻の味がエビの汁に移るので、信じられないほど香ばしくなります。つまり、自分の殻で蒸し焼きにされた手長エビに、香ばしい殻の香と旨味がプラスされ、最高の味付けが完成します。



お好みで醤油をたらす手もありますが、先ずは何もつけないで召し上がって下さい。車えびやイセエビとは違った上品なうまさを堪能できます。西伊豆ではお味噌汁の具としてこのエビを使いますが、もちろん、そうした調理法で不味いわけがありません。

もう直ぐ、春の素材が解禁になります。桜えび・シラスなど駿河湾もようやく春に模様替えです。今から桜が散る前までの僅かな期間、多くの魚介類は産卵前の美味しい季節となります。皆さんも旬の食材で味覚を磨いて下さい。


■ お取り寄せData ■
きちじ(きんき)
宮城県石巻市魚町 2-2-4
海鮮いちば  電話0225-23-1811
きちじ以外にも地物の毛蟹や魚貝類も美味しいです。私はきちじと合わせてドンコ・ホッキ貝・マスを取寄せました。キンキは1匹2000円~2500円です。

手長エビ(アカザエビ)
静岡県焼津市八楠4-13-7焼津さかなセンター内
カク長 渡仲商店 電話054-627-8909
手長エビの漁は少ないので、待つことになります。他にも駿河湾特産のタカアシ蟹なども予約できます。手長エビは500gで3500円ほどです。
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