花木の剪定時期・方法
花木は剪定時期に注意が必要
今回は花木の剪定の際に注意したい着花習性と、代表的な花木16種の剪定時期についてお話しましょう。
<目次>
花木の着花習性
植物はそれぞれ種類によって花芽をつける時期、枝に花が着く場所が決まっています。この遺伝的な性質を、「着花習性」といいます。【着花習性のタイプ】
着花習性はいろいろな分類の仕方がありますが、一つの目安として大まかに以下のように分類できるでしょう。
ライラックのように枝の先に花が咲くタイプは剪定時期に注意!
- 春から伸びた枝の頂芽や側芽に花芽をつけ、越冬して開花するタイプ
剪定は、基本的に花後すぐに行います。
頂芽にのみ花をつけるタイプでは、花芽が形成された後に剪定をすると、まったく花が咲かなくなるので特に注意が必要です。
側芽にも花をつけるタイプは、花芽が形成された後は強く剪定するほど花数が減ることになります。
秋以降は花芽の無い枝や樹形を乱している枝の整理にとどめておきましょう。
このタイプの花木としては…
≪頂芽につく≫
ライラック、ハナミズキ、ヤマボウシ、ツツジ、モクレン、ツバキ、シャクナゲ、ガマズミ類など
≪側芽につく≫
ウメ、モモ、サクラなど
≪頂芽と側芽につく≫
ニワウメ、レンギョウ、ロウバイ、マンサク、ヤマブキ、ハクチョウゲ、コデマリ、ユキヤナギなど
があります。フジは枝の側芽に花をつける
- 春から伸びた枝に花芽をつけて越冬し、春にわずかに枝を伸ばし開花するタイプ
剪定は、花後すぐに行います。このとき徒長枝も切り戻しておきましょう。
また冬の休眠期には、不要枝を整理して樹形を整えましょう。
このタイプの花木としては…
≪短枝の頂芽につく≫
ジンチョウゲ、ハナカイドウ、ボケ、カリンなど
≪側芽と枝元近くにつく≫
フジ
≪頂芽と側芽につく≫
トサミズキ、ヒュウガミズキなど
があります。ムクゲは新しく伸びた枝に花がつく
- 新しく伸びた枝に花芽ができ、その年の間に開花するタイプ
花後から、新梢が伸び始める前に剪定を行えば開花に影響しません。
このタイプの花木としては…
≪頂芽につく≫
バラ、ヒペリカム、ノウゼンカズラ、キョウチクトウなど
≪側芽につく≫
キンモクセイ、ナツツバキ、テイカカズラなど
≪頂芽と側芽につく≫
アベリア、ハギ、ムクゲ、サルスベリなど
があります。
各々の花木の剪定時期と注意点については、次項でご紹介します。
代表的な庭木の剪定時期
アジサイの剪定は、花後すぐに
【アジサイ】
花後すぐに、花の下に葉を2~3枚つけた位置で剪定します。
アジサイは花後、秋までに花芽が分化するので、秋以降に剪定すると花がつきません。
ウメは花後に剪定する他、徒長枝を適宜切り戻す
花後すぐに、枝の芽を2~3芽残して外芽の上で剪定します。
また、長く伸びた枝には花をつけず短枝に花をつける性質があるので、枝の生長が一段落する7月頃に長く伸びた枝を軽く剪定します。
冬の休眠期には、全体の様子を見て不要枝を取り除き、花芽に注意しながら樹形を整えます。
【カイドウ】
花後の剪定の他は、徒長枝には花芽がつかないので、休眠期に花芽を確認しながら長く伸びた枝を枝元4~5芽残して切り戻します。
【キンモクセイ】
今年伸びた枝に花芽をつけてその年の秋に開花するタイプなので、剪定は花後から春先まで可能となります。
夏の剪定は、枝枯れしやすくなるので避けましょう。
コデマリは自然な形を楽しもう
コデマリは、株立ちの自然樹形の花木です。
花が咲き終わったら、枝の分かれ目の部分で切ります。
また同時に、懐部分の枯れ枝や細い枝などを取り除き、風通しを良くしましょう。
老化した枝は花のつきが悪くなるので、休眠期に根元から切り取り、新しい枝と更新します。
サクラの剪定後は、癒合剤を塗って
サクラは剪定した切り口が塞がりにくいこともあり、そこから雑菌が入って腐りやすく「サクラ切る馬鹿、ウメ切らぬ馬鹿」という言葉があるほど。
強剪定は樹勢を弱らせることがあるので、できるだけ枝が細いうちに不要枝を見極めて剪定します。
時期は休眠期になりますが、剪定後は切り口に癒合剤を塗っておきましょう。
【サザンカ】
初夏に花芽分化して冬に開花しますから、花後すぐから春までに剪定をします。
剪定のポイントは、花が終わったらその枝の付け根から3~4芽残して切り戻すこと。
放任しておくと、年々花の位置が高くなってしまいます。
また、刈り込んで仕立てる場合は、3月下旬~4月上旬に行いましょう。
【サルスベリ】
サルスベリは今年伸びた枝に花芽がつき、秋に開花するタイプです。
他の花木に比べ寒さに弱く、春の萌芽も遅いのが特徴です。
地域によっては冬の剪定で枯れこむこともあるので、剪定時期は萌芽前(3月頃)に行うと安全でしょう。
剪定は、前年伸びた枝を付け根ぐらいまで切り戻します。
また弱い枝には花芽をつけないので、不要枝は元から取り除きます。
何年か剪定を繰り返すとその部分がコブのようになるので、時にはそのコブを取り除くために古枝まで切り詰めて樹形を整えます。
常緑のツツジも花後すぐの剪定が○
常緑性のツツジは、放任すると徒長枝で樹形が乱れやすくなります。
7月には花芽が分化するので、花が終わったらすぐに刈り込んで形を整えます。
【ハギ】
自然樹形を楽しむ花木ですが、放任すると茂りすぎるので、冬の休眠期に低く刈り込みます。
春の萌芽後に新枝が50~60センチまで伸びたら、これを高さ20~30センチに刈り込んでおくと、丈が高くなりすぎずに花を楽しむことができます。
【ハナミズキ】
徒長枝を整理する程度で、自然に樹形が整います。
剪定は、休眠期に花芽がついていない徒長枝や細い枝を取り除きます。
【フジ】
フジは、生長期にツルを長く伸ばしますが、この時期にツルを切り詰めると花つきが悪くなります。
あまりに長いような場合は、8月にはいってからツル先を20~30センチ摘み取ります。
強剪定は休眠期に、枝元の花芽を確認しながら切り詰めます。
モクレンは花つきのよい庭木。徒長枝には花が咲かないので適宜切り詰める
剪定は花後と休眠期に、枯れ枝や気になる徒長枝を取り除く程度で樹形が整います。
切り取る際は、枝の付け根から切りましょう。
葉芽・花芽が比較的見分けやすい木です。(花芽は葉芽よりもふっくらしています)
休眠期に剪定する際は花芽を避けて切りましょう。
ユキヤナギは自然に枝垂れる感じに仕立てたい
しなやかに枝垂れる枝に、白い小花がたくさんつく姿が魅力のユキヤナギ。
この特徴を活かすには、花後すぐに伸びすぎた枝を切り戻すことです。
この際、混み過ぎた枝や古枝は、根元から取り除いておきます。
4~5年経った古株になると、花つきが悪くなってきます。
そういったときは、花後に地際から高さ20センチくらいの位置で刈り込み、新しい枝に更新させましょう。
【ライラック】
頂芽に花をつけるタイプなので、剪定は花後に行います。
放任していると花の位置が年々上に上がってしまいますから、2~3年に一度くらい花の終わった枝を付け根で切る強剪定をします。
枝数が少ない木なので、休眠期の剪定は枯れ枝や絡み枝、ヒコバエといった不要な枝を取り除く程度にしておきます。
春にこの色を見るとホッとする。出来るだけ花芽を落とさないようにしたい
長く伸びた枝が弓なりに枝垂れるレンギョウ。
そのままの風情で楽しむ場合は、花後に混んだ枝や伸びすぎた枝を付け根から取り除く程度の剪定にします。
スペースが限られている場合は、刈り込み仕立てにします。
刈り込みは花後に、高さ1メートルくらいの半球形に整えます。
その際、古枝は付け根から取り除いておきます。
秋以降の剪定はその分花芽を失いますから、樹形を崩すほど伸びすぎた枝だけを切るようにしましょう。
今回は、花木16種の剪定時期にポイントを絞ってまとめました。
また庭木の手入れ、剪定の仕方については、たくさんの本が出版されています。
ご自分の家に植えてある庭木が掲載されたものを一冊(それぞれ微妙に解説が違う場合がありますから、「コレ」と思ったものを一冊だけにした方が良いでしょう)、お手元に置いておくと重宝しますよ。
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