ご主人とともに渡米して5年。NYで2人の子どもに恵まれたOさんは、しだいに子どもを日本で育てたいとの思いが強まり、長男の小学校入学前に帰国を決意することになりました。しかし、日本からとどく情報は、帰国者へのいじめの話が……。「日本で育てたいと決心したものの、帰国は恐怖以外の何ものでもありませんでした」
日本から寄せられる最悪な情報
海外への引越しを決めたときは、引越し先でのことしか考えられなかったOさん。帰国することがこれほど恐怖に感じるとは、夢にも思わなかったようです。まずは、Oさんの頭を悩ませたのが日本での「公園デビュー」。
一見楽しそうに見える公園も、見えない壁が。よく見ると仲良しグループで固まっていて、新しく引越してきた子どもはすぐ受け入れられない、といった話はアメリカにまでもとどいていました。まして、海外から帰国したとなると話題の中心となることは、間違いありません。
さあ、しゃべってみろ!
「そこまで帰国生は受け入れられないのだろうか」そんな心配をさらに深めさせたのがOさんのいとこのケースでした。Oさんのいとこは、幼少のときから小学4年生にいたるまでをイギリスで過ごしました。父親の勤務先が郊外にあったこともあり、周りに日本人がいない環境。日本語が流暢に話せないままの帰国となりました。
「痛いって、英語で言ってみろ!」
帰国後編入した小学校では子どもたちが面白がって、Oさんのいとこをたたいたり、つねったりしました。とっさにでる英語を面白がっていたのです。
Oさんのいとこは、とうとうそのイジメにたえきれず転校を決意することに。帰国生がたくさんいる小学校を探し出し、その小学校に編入するために遠くへ引越すことにしました。「今は、多くの帰国生に囲まれて、とっても楽しく過ごせているようです。帰国生がめずらしがられるところに入れたのが、悪かったのかもしれません。」
帰国生が目立たない場所に入れたい
NYは人種のるつぼ。いろんな人種のなかですくすくと育ちました。 |
それは、子どもに限ったことではないようです。Oさんより先に帰国された友人から、こんなアドバイスをもらいました。
「もし、日本に帰って『どこから引越してきたの』と聞かれたら、『海外』って答えるのよ。それで『海外のどこ?』と聞かれたら『アメリカ』って答えるといいわ。いきなり『NYから帰って来た』といったら周りの目は冷たくなるものよ。帰国者からも『へえ、NYっていいわね』といやみをいわれたこともあるぐらい」
Oさんが帰国後、一番に考えたのが国際色豊かな幼稚園に入れることでした。「子どもの日本語はあまり流暢でなかったので、バイリンガルのお友達が園にいてくれたのは、とても心強かったです」
どちらにせよ、帰国者である自分たちが周りから浮かないように心がけたOさん。そのかいあってか、想像していたようなトラブルもなく日本での生活ははじまりました。
Oさんのお子さんは、現在8歳。日本での生活を重視したOさんは、あえて子どもを英語学校に通わせることはしませんでした。Oさんのお子さんは現在、英語も話さなくなり、アメリカの思い出さえも忘れてしまったとのこと。「『もったいないね』といわれるのですが、私は気にしていません。子どもが日本の生活を楽しんでくれていることが一番ですから」
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