この話の先にある怖いこと
Aさんはきっと、ペットを亡くした悲しみや辛さから衝動的に行動したところがあったのだと思います。「ペットショップが悪い」と思い込んでいることを考えれば、文句を言いに行く気持ちもわからないではありません。ですが、Aさんの行動により、このあと怖い展開に進むおそれがあります。動物病院とペットショップというのは、決して仲の良い関係だけしかないわけではありません。疑いがあるというだけで悪者にされたペットショップとしては、この動物病院にいい印象を持たないでしょうから、今後購入者が動物病院について問い合わせたときにこの動物病院を紹介することはなくなるでしょう。
紹介されなくなるぐらいいいじゃない、と思うかもしれませんが、鳥などの小さなペットを安心して診てもらえる動物病院というのはまだ少なく、この動物病院を知らないがために助けられる命が助けられないという恐ろしいことがおきてしまうおそれがあります。
また、噂というのは怖いもので、広まるにつれて尾ひれがついていきますので、この動物病院は特定のペットショップを勧める(特定のペットショップとグルになっている)と言われてしまうかもしれません。そんな噂を聞いたらこの動物病院に行こうとする人は減ってしまうでしょうし、その結果、助けられない命が増えてしまうおそれがあります。
このペットショップは病気の子ばかりを扱っている、なんて噂になっていったら、このお店はつぶれてしまうかもしれません。単なる噂ではあっても、その噂により利用する人が減ればお店を運営するのは難しくなっていくものですから、影響力は大きいのです。
このペットショップで購入した子を飼っている人にとっては、この話は信じられない話でしょう。たぶん、動物病院やAさんに問題があると思うのではないでしょうか。思うだけなら問題ないかもしれません。でももし、この話からこの動物病院に問題があるような話をしだしたら、それはまた新しい噂になり、問題を大きくしてしまうことでしょう。
Aさんは「ペットショップが悪い」という結論を受け入れましたが、私はこの話を聞いたときに、ペットショップだけが悪いとは思えませんでした。そして、Aさんが次にペットを飼ったときに、同じ失敗をしてしまうのではないかと心配になりました。
ペットの死の原因が1つであることは少ないと思います。遺伝的要素を疑えばどこかに病気を持った親戚がいてしまうものでしょうし、治療方法を疑えばほかの選択肢もあったことに気が付くでしょうし、飼い方を疑えば改善点も見つかるものだと思います。
自分にとってだけ都合のよい結論を選ぶのではなく、冷静に考えられるようになるまで時間をかけて、ペットの死と向き合っていいのではないでしょうか。ペットの死を冷静に考えることができたとき、次に飼うペットはもっと幸せに、もっと健康状態もよく飼えるようになるものだと思います。