臭いの大切さ
ペットのテリトリーを尊重するためには、臭いについても容認する必要があります。ペットを飼っていない人も含めて多くの方が、ペットの臭いを気にする傾向があります。たしかに、今までの生活の中になかったペットの体臭や排泄物の臭いは気になるものかもしれません。でも、ペットにとっては臭いってとても大切なんです。「今日からここがあなたの家よ」と言われても、人間の言葉を理解できないペットが安心できるわけはありません。では、どうやってペットは新しい環境を受け入れ、安心できるようになるかというと、音と臭いが大きな役割を果たすことになります。
きっと誰もが一度は使ったことがあるであろう目覚まし時計。買ったばかりのときは目覚まし時計で目が覚めるのだけれども、使っているうちに目覚まし時計の音に慣れてしまって、起きれなくなってしまった経験ってないでしょうか?
知らない音には警戒心が働きますので素早く反応してしまいますが、聞きなれた生活音は聞き流してしまうことが多くなります。目覚まし時計の音も、聞きなれてしまうと聞き流せるようになってしまうために、鳴っても起きれなくなることがあるようです。同じように、最初は飼い主の声や飼い主家族の生活音に警戒することが多いペットも、毎日聞いているうちに慣れていき、安心できるようになります。
臭いは音とは少し違います。私たちの臭いに慣れるだけでなく、それ以上に自分の臭いをつけることでペットは自分のテリトリーを確立していきます。犬が散歩の途中で電信柱などにおしっこをする行動や、発情期の猫が壁などにおしっこをふきかける行動、猫の爪とぎなどはわりと簡単に近所で見ることのできるテリトリーを主張する行動(マーキング行動)です。
マーキング行動は、自分の臭いをつけることにより、「ここは私の場所だ」と明らかにする行動です。小さなペットでも、テリトリーを主張するためにケージからおしっこを飛ばすマーキング行動をする種類がいます。主張するだけでなく、テリトリーを侵害する見知らぬ相手や嫌いな相手を追い払うためにおしっこをかける行動もあります。
また、おしっこだけでなく、自分の体臭を強く発散して自分の臭いをつけることもあります。体臭の強さをコントロールするというのは人間にはできない(と思う)ので、ちょっと理解しづらいかもしれません。でも、動物は自分を落ち着かせるためや敵を警戒させるためなど、さまざまな理由から体臭を強く出すことがあります。
ペットを家に迎えたとき、ペットの臭いは気になるかもしれません。でもそれは、自分を落ち着かせるためにペットがあえて体臭を強く出しているからでしょう。ペットの体臭を気にして、頻繁にケージやトイレを消毒したり、ペットを洗ったりしていると、いつまでたっても自分の臭いにならない環境に対してペットがストレスを感じたり、もっと強く体臭を出すようになったりします。
ペットにとって、臭いはテリトリーを主張するとともに、ペットにとって安心できる環境を作るために必要なものです。「臭い」と文句を言うよりも、ペットの臭いを受け入れるように努力してください(余談ですが、多くの飼い主さんが自分のペット種の臭いは好きなようです。鳥の臭いの好きな人や猿の臭いの好きな人、フェレットの臭いが好きな人など、ペットに興味のない人が聞いたら変な顔をされそうな嗜好ですが、私はそういう飼い主さんに飼われるペットは幸せだと思います)。