実は、かなり前から皆さんにご紹介したいと思っていたのが、今回の記事なんですね。
飼育の対象となる、ペットとして、の両爬ではないのですが、きっと目の前で、観察することでさまざまな想いを感じさせてくれることでしょう。
さあ、皆さんもぜひ一度、ご覧下さい!
ウミガメの産卵を!
特に、今年は全国的にアカウミガメの上陸産卵数が、近年まれに見る多さといううれしいニュースも入っています。梅雨でイマイチ気分が晴れないこの季節に、こういう出来事に思いを馳せてみてもいいのではないでしょうか?
ところで、このようにウミガメの産卵を観察することを安易に勧めることに対しては、むろん賛否両論あることは承知しています。
しかし、生物としてのウミガメを識り、置かれている現状を把握し、マナーを守った上で観察を行うことは、決して無駄なことではなく、むしろ学ぶことの方が多いと考えています。
そのためにも、ちょっと前置きは長いのですが、しっかりとお読みになってください。
上陸したアカウミガメ |
撮影:河野澄雄 |
ウミガメの産卵
さて、今回はウミガメの産卵に関してのお話を紹介するわけですが、その背景を少し見てみましょう。日本の近海には、後述する5種の海生のカメが生息しています。
このうち、特に本州、九州および四国の太平洋沿岸でアカウミガメが多数産卵を行うことは意外に知られていません。
現在では、北は茨城県の鹿島灘から南は、私の住む宮崎県の太平洋沿岸まで。また日本海側では福岡県の玄界灘から九州の東シナ海沿岸でほぼ毎年産卵をするために上陸するアカウミガメが確認されています。
特に有名なのは、鹿児島県の屋久島でここはおそらく日本で最大のアカウミガメの産卵地です。また宮崎県の日向灘に広がる砂浜、紀伊半島、遠州灘もかなり規模の大きい産卵地で毎年、多くのアカウミガメの産卵が記録されています。
また南西諸島や小笠原諸島ではアオウミガメの産卵が多く見られ、ごくまれにタイマイの産卵も行われているようです。
産卵期のシーズンは、南方ほど早いのですが、おおむね5月下旬から7月上旬で、宮崎あたりでも数キロの海岸線で、一晩で2-3個体ほどの上陸を観察できることもあります。
ウミガメという動物
さて、それではこの辺でウミガメという動物についておさらいしておきましょう。両爬飼育ファンの方は意外にご存じないのでは?一般にウミガメと呼ばれるのはウミガメ科とオサガメ科に属する種類のカメです。
ウミガメ科は世界中の海に以下の6種が生息するとされています。
・アカウミガメ
・アオウミガメ・・・亜種としてクロウミガメ
・タイマイ
・オリーブヒメウミガメ
・ケンプヒメウミガメ
・ヒラタウミガメ
一方、オサガメ科はオサガメの1種だけです。
日本の沿岸域ではアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、オリーブヒメウミガメ、オサガメの5種の記録があり、オリーブヒメウミガメ以外は上陸して産卵した記録があります。
アカウミガメ
南西諸島と小笠原諸島を除けば、アカウミガメのみが国内で産卵する種類ですので、ここではもう少しアカウミガメについて勉強してみましょう。アカウミガメ |
アカウミガメCaretta caretta は太平洋、大西洋、インド洋の熱帯から温帯域および地中海に生息しており、日本では主に茨城県以南の太平洋岸と南西諸島を中心に生息しています。
最大甲長は1mに達しますが、国内に上陸するメスの成体の平均的な甲長は85cmほどです。
他のウミガメに比べ、頭部がやや大きく、全身の体色が赤褐色に見えるためこのような名前で呼ばれています。
肉食性が強く、主に海底の軟体動物や甲殻類を多く食べています。
日本は北太平洋では主たる産卵地で、5-8月中旬にかけて産卵のため上陸し、1回に100-120個の卵を産みます。通常、同じ個体は1-4年おきくらいに産卵に訪れ、1シーズンで1-5回ほど産卵することが知られています。
アカウミガメの仔ガメ |
撮影:三浦二郎 |
卵は50-75日で孵化に至り、幼体は海に帰った後、黒潮に運ばれて北上し、北太平洋をわたり、アメリカ西海岸にまで漂流して生活していると考えられています。
およそ30年ほどをかけて性成熟に達すると見られ、日本近海に戻ってきた後に、東シナ海付近で普段は生活し、繁殖期になると日本各地で産卵を行っていると考えられています。