交雑
さ、それではいよいよ繁殖させてみよう。遺伝学では、こういう時に「交雑」という用語を使うんだが、これは普通の使い方とちょっと違う。通常は「交雑」って言ったら「異なる種の生物を交配させて雑種を得ること」なんだが、遺伝学の場合は「同じ種で、異なる形質を持つ個体同士を交配させる」ことで、そこから得られた個体を「雑種」と言うんだ。ちょっと普通に使う「雑種」っていう言葉とイメージが違うから注意してくれ。
だから本当は異なる形質を持つ個体同士で繁殖させることを「交雑」というのだけれど、ここでは便宜上、同じ形質どうしの繁殖も「交雑」という言葉を使わせてもらおう。
とにかく、ここではいくつかのパターンでコーンを「交雑」させて遺伝の実際を見てみよう。
さて、まずはノーマル同士を交雑させてみよう。じゃ、まず遺伝子型だが...
「先生!」
を、質問か?はいどうぞ。
「ノーマルって言っても優性のホモとヘテロがありますが、どちらで考えるのですか?」
さすが、いい質問だ!
確かに、ノーマルといってもMMとMmの2種があるよな。
まず最初は、わかりやすいようにMMの優性ホモから考えよう。というわけで
パターン1.・・・ノーマル(優性ホモMM)同士の交雑
ここで重要なのは、減数分裂だ。
つまり繁殖するためには、精子や卵といった配偶子を作らなくてはいけない。その配偶子を作るために行われるのが減数分裂だったよな。
下の図のように、オス親が減数分裂して作った精子にはMが1個だけ。同様にメス親が作る卵もMが1個だけ入っているわけだ。
で、この精子と卵が受精して新しい子ができるわけだが、オスからもらったMとメスからもらったMの両方を持つから、子の遺伝子型はMMと。
ということは、このパターンではMMの遺伝子型、つまりどんなコーンだけが生まれるのかな?はい。6番。あ、さっき当てたか。まあ、いいや。
「ちぇ、さっき当たったのに...ノーマルです。」
口答えしない。正解です。
これを見てわかったと思うけど、要するに遺伝というのは、それぞれの親から、1個ずつ遺伝子をもらって、その組み合わせで子の表現型が決まる、という仕組みなんだよ。
じゃ、この調子で劣性の組み合わせで考えてみよう。
パターン2.・・・アメラニ(劣性ホモmm)同士の交雑
もうダラダラ説明しないぞー。下の図でわかるね?
簡単に解説すると、両親とも劣性遺伝子mmしかないから、配偶子も全部mだけ。受精して生まれる子もすべてmmになる。
したがって子はすべて黒色がないアメラニだ。
このパターン1.と2.のように、同じ形質のホモ同士を交雑させていっても、すべて同じ形質の子しか得られない。こういう系統を「純系」と言います。
じゃ、いよいよ本当の「交雑」だ。
パターン3.・・・ノーマル(純系・優性ホモ)とアメラニ(劣性ホモ)の交雑
雌雄はどちらでもいいから、とにかく配偶子の遺伝子型を考えてみてください。
下の図のようになるよな。
つまり、ノーマルの配偶子はMだけ。アメラニの配偶子はmだけ。で、これが受精すると...
そう。子は下の図のようにMmのヘテロになるわけだ。
ということは、どんな表現型かな?...はい!11番!!
「ヘテロだから優性形質、つまり...ノーマルです!!」
はい!大正解!!
つまり、純系のノーマルとアメラニを交雑させると、すべてノーマルになってしまうわけだ!正確には、コレ、つまり純系の優性と劣性を交雑させると、すべて優性形質が現れることを「優性の法則」と言うんだね。