爬虫類・両生類/両生類・爬虫類関連情報

ワニガメとカミツキガメの発見事案(2ページ目)

去年のボールパイソン騒動の再来でしょうか。5月と6月になってから全国でぞくぞくと報告されるワニガメとカミツキガメの発見ニュース。今回は両爬の知識があまりない一般の方向けに解説しました。

執筆者:星野 一三雄

発見例の異常増加の理由

もちろん、理由は飼育者がわざと遺棄したり、あるいは管理不行き届きで脱走させてしまった以外に考えられませんし、それは私たち両爬愛好家の間でもっとも蔑まされるべき行為です。何の言い訳も、弁解の余地もないのは十分わかっています。ただし、それでもそこに至る背景はある程度見いだせます。

理由1:注目されるようになってしまった
もちろん、昨年の秋の両爬脱走・発見・保護騒動以来、注目を浴びてしまってニュースとしての価値が出てしまったからことごとく報道されてしまうようになった、というのも理由の一つではあると思います。例えば琵琶湖だけでも過去に十数例のカミツキガメ捕獲例があるのですから、あえてニュースにされてしまっている感は否めません。
しかし、問題はそんなところにはありません。これだけの短い期間でカミツキガメが17頭、ワニガメが9頭です。私たち両爬飼育者が「指を食いちぎるなんて、また大げさな...」などとうそぶいても、一般の方から見れば異常以外の何者でもありません。現実に万一、大型個体に咬まれてしまったら、大けがをする可能性はありますから。

理由2:活動期間に入っている
5月から6月にかけてはカメに限らず、多くの両爬の活動期間です。どんなに動かない両爬でもこの季節は繁殖のために異性の個体を探し歩くし、餌もドンドン食いまくりますから、普段よりも移動が大きく私たちと出会う可能性も高くなります。不忍池でワニガメが産卵していたのではないか、というニュースなどはその典型でしょう。
しかし繰り返しますが、問題はそこではありません。

理由3:特定外来法と動物愛護法の影響
あまり考えたくはないのですが、これだけ時期が重なると関連づけずにはいられません。
何度も記事にしてきたことですが、始めてこのページに来た方のために簡単におさらいをしましょう。
・特定外来生物法
正式には「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」という新しい法律で、もともと日本には生息していなかった生物(植物を含む)によって、日本の固有の生態系が被害を受けることを防ぐことを目的に平成16年6月に公布された法律です。
この法律では、2006年6月現在で哺乳類から植物までで100種程度、両生爬虫類だけで11種類の生物が「特定外来生物」に指定されています。「特定外来生物」に指定された生き物は飼育・販売・譲渡などが禁止され、これに違反すると最高で300万円(法人の場合は1億円)の罰金などが科せられます。(施行日までに飼育していた個体は、届け出によって許可を受けて飼育を継続できる)
今回、問題になっている「カミツキガメ」は、この特定外来生物に指定されています。
公布を受けて平成17年6月より施行されたのですが、この時に規制によって飼育が困難になると考えたカミツキガメ飼育者が、野に放ったのではないかと考えられています。

・動物愛護法
正式には「動物の愛護及び管理に関する法律」と言います。もともとは昭和48年に「動物の保護及び管理に関する法律」として公布されたのですが、それが平成11年に改正され名称もこのように変わりました。この時に「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物」に関しては「条例」で飼育を「制限」するように決めました。そこで各都道府県は「危険動物」を条例で指定し、安全のために飼育等に厳しい基準を設けて規制をしました。さらに平成17年6月に改正され、危険な動物を政令で「特定動物(いわゆる特定危険動物)」として指定を行い、全国一律で飼育等に規制を行うようになりました。
今回、問題になっている「ワニガメ」は、この「特定動物」に指定をされています。
この改正動物愛護法の施行が平成18年6月1日でしたので、やはりワニガメ飼育者が規制による登録等の煩わしさからワニガメを捨てた可能性が考えられているわけです。
写りが悪くて...
ワニガメ

なお、ワニガメよりも性質が荒く、危険性が高そうなカミツキガメは特定(危険)動物には指定されていません。これは、カミツキガメはすでに「特定外来生物」として指定されており、飼育等が禁止されていることが前提になっているし、すでに飼育の許可や登録が行われているはずですので二重の指定を避けるためです。
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