町と言っても道路沿いに一軒のカフェと食料品店そして小さな駅があるだけです。そろそろ空腹になってきたのと、これだけの距離を移動しても、ほとんど何も生き物に出会えていなかった焦りから情報に飢えていたのもあって、小さな食料品店で食事と情報の聞き込みをしました。
その店には店番でしょうか、おそらく高校生くらいの青年がいました。
なんだかよくわからないファーストフードとミネラルウォーターを買った後、図鑑の写真を見せながら
「この辺にエリマキトカゲはいないか?」
と聞くと
「この辺では見たことがない。ケアンズの動物園でしか見たことがない。」
というがっかりするような言葉。完全に落胆しつつも、その町の雰囲気が気に入り、夕暮れの中、店の前で簡単な夕食を食べます。道路を挟んだ正面のカフェがあまりにも雰囲気がいいので写真を撮った後、その町を後にしました。
◇ついに大物登場
帰路は完全に夜道。車のヘッドライトに照らされるアスファルトの路面を見る目もなんとなく力がなく、こんな動態視力では何も見つけることはできないと思ったその瞬間、そんな動態視力でも見逃さない大きさの「細長いもの」を二人同時に発見しました。
間違いなく生きているヘビであることは確信が持てましたので、急いで車を止めて走り寄って懐中電灯で照らします。
「ん?頭が黒いぞ...」
まさかね、と言う言葉が頭をよぎりますが、次の瞬間に私の足はそのヘビの胴体を軽く足で踏んで制圧します。走り寄ってきた友人に私は、自分でも信じられない言葉を発しました。
「ズグロパイソンだよーーーーーーー!!!!!」
ついに登場!!ズグロパイソン様 |
間違いなく、私の足の下には日本でもっとも高価なヘビであるズグロパイソンAspidites melanocephalusがいたのです。長さは120cmくらいと、まだ若い個体でしたが、今回「見られればいいな~」くらいにしか考えていなかった幻のヘビと出会うことができたのでした。
私の目つきなんてどうでもよろしい・ズグロとツーショット |
ひとしきりもてあそんで、フィルム一本分を使うくらいの撮影をして、本当に、本当に名残惜しかったのですがリリースをして、その場をあとにしました。
二匹目のドジョウならぬ二匹目のパイソンを期待して目を皿のようにして道路を見ながら車を進めます。
結論を言うとヘビはこれで打ち止めでした。途中轢き殺されながらもガンガン攻撃してくるブラウンツリースネークBoiga irregularis、日本ではオオガシラヘビあるいはボイガの方がわかりやすい毒ヘビと電光石火の速さで逃げていった小さな、おそらくコブラの一種を見ただけでした。
頭をぺちゃんこにされてなお攻撃的なボイガさん |