爬虫類・両生類/ヘビの飼い方

強制給餌 最後の手段?最初の手段?(2ページ目)

ヘビを中心に、両爬と他の動物の飼育の最大の違いが「拒食」です。その対応策の手段の一つである「強制給餌」は、どうしても実行に躊躇しがちです。正しい強制給餌を考えてみましょう。

執筆者:星野 一三雄

▼まずはテーリングで
強制給餌は、ある程度の経験によって熟練していくものです。そこで最初はマウスの「尻尾」を使う「テーリングTailing」で練習することをおすすめします。特に孵化直後の幼ヘビに使われ、個体にかけるストレスも少ない方法です。

マウスの尻尾には付け根から先端に向かって小さな毛が生えています。そのため尻尾の付け根から口の中に押し込んでいけば、毛の方向も助けになって、それこそおもしろいようにするすると入っていき、半分ほど飲ませたところで、ヘビを自由にすると自分から飲み込んでいきます。

まさにテーリングは強制給餌の初級テクニックなのです。ただし、尻尾だけでは十分な栄養にはなりません。あくまでも強制給餌の感覚を会得するための技術だと考えてください。テーリングの応用でマウスの「」を与える方法もあります。これならば少なくともカルシウムは豊富です。このときには大腿骨がとがっているのでヘビの口や食道を傷つけないように注意しましょう。

▼悪魔の器具?ピンキーポンプ
幼ヘビへの究極の強制給餌が「ピンキーポンプ」です。下の写真のような注射器状の器具です。

慣れない方が聞いたら卒倒しそうな話なのですが、このシリンダー内にピンクマウスを入れて、ピストンで押すことによってマウスをミンチ状にして押しだし、そのままヘビの消化管の中に注入するのです。これならばマウス一匹分まるまる与えるわけですから、栄養の点でも問題はありません。一般的でないので器具の値段が高いのがネックですが。
ピンキーポンプの使用例・サンプルはやっぱりマンダリン

▼おなかに優しい「液状強制給餌」
強制給餌が必要な個体は消化機能が弱っている場合が多いようです。ですから「強制給餌は液体状の餌を注射器などを利用して行うべき」という方もいらっしゃいます。先のピンキーポンプもその一つですが、私の友人は卵黄を使って多くのヘビを立ち上げています。

▼最終目標は自力摂餌
実は強制給餌は慣れてしまうと、とても便利な給餌方法です。つい頼ってしまい、それが通常の手段になってしまうこともあります。しかし、あくまでも最初の、あるいは最後の手段であり、それによって食欲と体力を復活させヘビが自力で摂餌できるようにしましょう。
個体の大きさにもよりますが、私は2、3日置きくらいに
1.強制
2.置き解凍ピンク
3.切りピンク
4.活きピンク

の順で挑戦をしています。
強制給餌後の自力摂餌までの期間ですが、これはもちろん個体差があります。幼ヘビなどは強制後の次の給餌で自力摂餌することもあります。が、中には2年近くも強制給餌で生かし続けている例もあり、逆に一年間強制給餌を続けたが、結局死なせてしまった、とか、強制給餌の翌日に死なせてしまった、という例もときどき聞きます。最終的には、その個体の体力によるところが多いのでしょう。

また、ヘビ以外の両生爬虫類への強制給餌の話もよく聞きます。基本的にはヘビ同様「消化の良いものを口に入れる」とか「注射器などで流し込む」という方法がとられており、トカゲモドキやキノボリトカゲなどの話を聞いたことがあります。ただし「リクガメ」の強制給餌は難しそうなので、慣れた動物病院などで行ってもらう方が賢明でしょう。

強制給餌は個体の立ち上げには必要なテクニックではありますが、やはりそのヘビの食性や自然での生活のサイクルなどの生態をよく研究し、個体の様子を観察した上であくまで自力摂餌をしないヘビへの手段として行うべきでしょう。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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