間違った説(?)ネコの体温調節法
あるネコの本に、ネコは自分の唾液で全身の毛をとかしつけて=身体を濡らすことで=体温を下げる、と書かれていました。
皆様は実際に、ものすごく暑い日に全身を舐めまくっているネコをご覧になったことがありますか?
ガイド自身は暑いときに自分の身体を舐めまくっているネコを見たことがありません。
理屈では、身体を舐めて唾液で濡らすことで体温が下がる=人間が汗をかいて体温を下げるのと同じ理屈?、と理解できますが、実際、もしネコが自分の身体を舐めて身体を冷やそうとしたら、非常に多量の唾液が必要じゃないのかなぁ?と心配になってしまいます。
ではネコはどうやって、体温調節し、暑い夏を涼しい顔で過ごしているのでしょう?
ネコの祖先は砂漠の種族
家猫などの祖先は砂漠のリビア山猫なので、すでに暑さに順応できる身体構造ができあがっており、また暑さに適した習性を持っています。
◇ネコの暑さ・乾燥に適した習性
暑い時間帯は岩陰などに横たわり活動を休止する→ネコは夜行性
獲物を長時間追い回す狩りではなく、待ち伏せして狩る→体温温存型狩り
こうしてネコは一番暑い時間帯を休息に当て、夜になって気温が下がってから狩りに出かける習性ができました。
◇ネコの暑さ・乾燥に適した身体構造
身体から出て行く水分を極力抑える
生き物はすべて、量の違いこそあれ水分がなければ生きていくことができません。
暑い・乾燥した土地では、なにもしなくても水分が蒸発していきます。
そこを生き抜くためには、排出する水分を極力抑える身体構造が必要です。
唾液も水分ですから、『身体を舐めて消耗させる』なんてもったいない使い方をするはずがないでしょう。
排出物からの水分排出もできるだけ抑えるために、ネコのオシッコは凝縮した濃い状態で排出されます。ネコのオシッコを半日程度ほっておくと、すぐに固形物のような結晶状態になってしまいます。
---注意!---
ネコは少ない水分でも生きていける身体を持っていますが、だからといってたくさん水を飲ませる必要がない、という意味ではありません。濃縮されたオシッコを出すためには、腎臓がフル回転で働き続けることを意味します。
水分排出を抑える、それが乾燥地帯で生き抜くための身体構造ですが、自然界より遙かに平均寿命が超えている家庭ネコの場合は、たいていが高齢になると腎疾患を抱えることとなります。
少しでも長く健康でいて欲しい、と願うのであれば、尿石対策のためにも常日頃から水分を充分に取れるよう工夫して、腎臓の負担を軽くしてあげてください。
家庭で飼われているネコの場合は、食べているものの内容によって緩めのウンチを出す子もいますが、カリカリに乾燥した状態で出てくるのが本来正常なネコのウンチです。
また、ネコの身体からは汗が出る部分が少なく、汗による水分排出も抑えられています。ネコが汗をかくのは、鼻先や足の裏です。ただ、この汗も暑さで出るよりも、緊張したときや、不安な時の方がよく出るように思います。
※動物病院で診察中に、診察台の上にべったり足裏から出た汗によって梅の足跡が付いた、なんて経験ありませんか?
そして、暑い国のドメスティック(土着)キャットは、どちらかというと耳が大きい傾向があります。シャム猫などがそうですね。
反対に寒い国のネコは、サイベリアンなどに代表されるように、耳が小さめです。
耳の毛は比較的薄くなっているので、身体からの放熱効果が一番高いのは耳。なので暑い国には耳の大きなネコが多いようです。
もう一つ疑問を持った本の解説
ある獣医さんが書かれた本には、
ネコはラクダのコブと同じような仕組みを身体に持っている
ラクダのコブの中には脂肪が蓄えられており、ラクダのコブの脂肪が体内で消費されると炭酸ガスと水が排出され、体内に水を供給するという仕組みになっている。
ネコはラクダのようなコブを持っていない代わりに、全身に脂肪を蓄えて、それを水分に変化させて供給している。
とありました。。。が、これも???です。
暑い国のネコは、痩せてヒョロっとした体型が多いですね。あの体型ではどう考えても水分に変えられるほど脂肪を蓄えているとは思えません。
寒い国のネコは脂肪が付きやすいですが、この皮下脂肪も、水分供給、というよりは、防寒や獲物が少なくなった冬場を乗り切るための意味合いの方が高いのではないでしょうか?
この、ネコがラクダのような身体構造を持っている、という話もどうも当てはまらないように感じます。
ネコに学ぶ自然体
すでに暑さ・乾燥に順応した身体を持っているネコたちの暑さをやり過ごす一番の方法は、一番居心地の良い涼しい場所を見つけて、長々と伸び、ひたすら体力を使わないようにじっとしていること…だと思いませんか?
人間が改良を加えて、姿形を固定させてきた血統ネコや、本来生まれ育った環境以外の場所で暮らすネコたちの中には、暑さ対策に気を遣う必要があります。が、その土地土地で生まれ育ったドメスティックキャットたちは、かなり暑さに強いといえるでしょう。
ただ、いくら暑さに強いといっても、必要とする水分が足りなくなってくると、身体は筋肉などの組織からも水分を集めようとするので、血液が濃くなったり流れが悪くなって、体内に熱がたまってしまいます。
これが熱中症です。
マンションなど機密性の高い住宅、一軒家の2階などを閉めきってしまうと、昼間は想像以上の高温になってしまいます。
エアコンのドライなどで温度調節できない場合は、必ず空気が流れる道筋を作り、ネコが避難できる比較的温度が上がりにくい場所を用意してあげることが必要です。
暑い暑い午後は、ネコが避難している場所に枕を持って行って、ちょっとお昼寝~~
なんていかがですか?
ここで一緒に寝る?
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ネコの嗅覚
ネコのオシッコが変?!FLUTD
ネコの暑さ対策
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